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チェック・ポイント4断熱は軽視しない

 普通、この断熱の問題はプランニングの段階ではあまり深く考えたりしないものです。(その段階ではどちらかと言うと、家の格好、間取りや設備面を主に考えているのではないでしょうか)この断熱の問題は住宅メーカーやあるいは設計士任せになってはいないでしょうか?

 住んでみて、始めてこの断熱の問題に体を持って体験することになります。また、この断熱の問題は日常の出費とも大きくかかわって来ます。家全体の断熱効果が悪ければ、冷暖房費が 1年通じて、大きな負担になることでしょう。また、この断熱問題を考えないと、後で、目に見える所だけでなく、主に見えない場所で結露が発生し、壁板を腐らせることになり、大きな工事費にもつながります。 

 日本の気候は大昔から高温多湿の国です。鎌倉時代、兼好法師が書いた徒然草にも「家は夏向きに作るべし」みたいなことが書かれています。それで、暑い夏には四方の障子を開放し、風を取り入れました。また、太陽光線がまともに当たる屋根には断熱効果抜群の萱を分厚くふくか、粘土瓦(これ自体も若干の断熱効果あり)やその下にわらを入れた泥を張っていました。

 現在でもこの泥式は断熱材として他の材料より、よほど効果抜群と言われています。(ただ、残念なことにこの古来からある泥を瓦の下に張る工法はほとんどなくなっています)冬は囲炉裏とか着る物で調整していました。雨戸も冷たい風対策になったことでしょう。このような家の作りや寒暖の対策は基本的に、大昔から戦後までも変わらぬことでした。

 このようなことが激変するのが戦後かなりたって、(石油)ストーブ、クラー、エアコンなどが、各家庭に普及してからです。それらの機器の効果を高めるため、すき間風の入るような家でなく、機密性の高い家が普及しました。また、1970年代の石油危機以来の省エネ問題が、さらに拍車をかけ、「高機密、高断熱の家」の言葉はテレビ、新聞、住宅チラシ、展示場の看板などで、定番の宣伝文句になりました。

 「高気密、高断熱の家」と言う宣伝は問題ありです。私は素人ながら、この宣伝は何か、うさん臭い物があると思っていました。最初の「高気密」について、私の独断ですが、これは日本の気候に逆行していると思います。なぜかと言うと、繰り返しになりますが、大昔から日本は高温多湿の国です。冬は少々寒くても昔は囲炉裏もありましたし、着る服で何とか調整ができました。また、夜は布団に入り、寝てしまえば終わりです。

 しかし、夏はそうは行きません。萱吹きの屋根や泥の壁で太陽光線を遮断し、障子や襖を開け拡げて風を取り入れていました。 現在はどうでしょうか。夏はエアコンをガンガンきかせ、冬はストーブを焚くと言うサイクルだと思います。これは常に部屋を締め切った状態ですから、結露、カビ、ダニなどの問題が発生しやすいのです。

 また、人間も動物ですから、皮膚や体も、夏は夏なりに、冬は冬なりに調整したり、抵抗力があるはずです。しかし、常に締め切った部屋でエアコンやストーブをきかせていたら、人間の体が本来持っている自然順応機能を弱めているのではないでしょうか。それは、また、最悪の結果として、皮膚病や各種の病気の原因に連動しているのかもしれません。むしろ、表現は良くないかもしれませんが、太平洋側や九州など温暖地では「すき間風が入る位」が、家全体で息が出来ていいでしょう。 

 次の「高断熱」の言葉そのものはいいと思います。しかし、メーカーの広告のように果たして、「高断熱」の家に実際なっているのか、大いに疑問です。断熱の意味は文字通りに解釈すると、まさしく暑さと寒さを遮断すると言うことです。本当にその通りだったら、1年中「高断熱」の家ですから、エアコンもストーブも必要ないと思うのですが、現実は全く違うのです。逆に、昔あった家より、1年中と言える位、冷暖房器具を使いっぱなしではないでしょうか。もちろん、電気代や燃料代も高く支払っているはずです。

 私は住宅メーカーが「高断熱」と宣伝するなら、外気温何度に対して、何度断熱や遮断効果があるのか、具体的にデータを公表すべきだと思います。たとえば、「外気温マイナス5度に対して、室内は10度を維持、外気温30度の時は室温は25度維持」と言う具合にです。しかし、私はこのような具体的データは今まで見たことがありません。広告紙に大きな字や目立つ色で「高気密、高断熱の家」と抽象的に書いてあるだけです。

 ちなみに私のログハウスは98年1月24日雪の日の早朝、外気温0度の時、暖房器具なしで窓を閉め切った状態で屋内は5度ありました。 98年7月20日正午、外気温31度の時、前夜から窓を開け早朝(その時間は内外温度は同じ24度)窓を閉めた状態で28度でした。少し住宅メーカーのチラシにこだわりましたので、再度、断熱の問題に戻ります。

 断熱について、主に次の
 
(1)屋根断熱
 (2)壁断熱
 (3)窓断熱
 (4)床下断熱

を考える必要があると思われます。

(1)屋根断熱について

 私は家の断熱の中で一番考慮する所はやはり屋根全体と思われます。太陽光線が最も当たり、冷気が屋根から一番降りやすく、室温に最も大きな影響を与えるからです。

 まず、瓦は予算上のこともありますが、陶器瓦もしくは粘土瓦が断熱、丈夫さやメンテナンスを考えるなら薦めます。本当は茅葺きの屋根がいいと思いますが、材料の問題、技術者不足や吹き替えを検討するとあきらめざるを得ません。

 新建材とともに流行している新素材の屋根(チェックポイント10を参照)は陶器瓦や粘土瓦に比べれば、建築時コストは安いです。しかし、ある大工さんと瓦職人さんが同じことを私に教えてくれました。「あの屋根は最初はいいが、10年もしない内に色が汚く変色する。熱が上がりやすく、下に張ってある野地板を痛めて、いずれ屋根工事をしないといけない」「その点、陶器瓦や粘土瓦はかなり長持ちするし、色も変色しない。メンテナンスを考えれば、結局安くなると思う」と。

 瓦を受け止めている野地板について、私は最初全く眼中にありませんでした。東京にあるログハウス展示場の女性スタッフが「このモデルハウスの野地板は断熱効果を考え、厚さ3.5センチです」と言ってました。あ〜そうか、瓦を支えるだけでなく、野地板は断熱の関係もあるのだな〜と、私はそれから思うようになりました。予算、屋根の重量バランスも関係するかもしれませんが、分厚い野地板がいいでしょう。

 断熱材の材料と厚さについて、これも色々出回っています。本当は天然素材でわらを切って、泥と混ぜ合わせ、それを瓦の下に張るのも、いいと思われます。しかし、以前どこでもしていたこの工法はほとんどなくなってしまいました。現在はスタイロフォーム、ロックウール、グラスウールなどの断熱材が主流です。厚さは予算が許す限り、厚い方がいいと思います。出来れば20センチか、最低でも10センチは欲しいところです。これらのことについて、私は事前勉強が不足でしたので、設計士の言う通りにしました。私の家の屋根断熱材はロックウールで、厚さは15センチです。通常は10センチ位までと聞きますから、厚い方です。

 屋根断熱は瓦、野地板、断熱材、天井板も関係していますので、総合的に考える必要があるでしょう。

(2)壁断熱について

  35年前、私の実家は全面改築を父がしました。その時、柱と柱の間(壁になる空間)に竹で餅網のように一杯縄で張りました、そこにわらを切って、泥で混ぜ、壁を塗り固めました。このような泥壁や漆喰壁は効果抜群の断熱材と言えます。また、この壁は雨の時には湿気を内部に吸い込み、乾燥時期には湿気を外部に吐き出す調湿効果もあります。

 同じように私のログハウスの丸太壁も優れた調湿効果があります。それにコンクリートより12倍とも13倍とも言われる断熱効果もあり、抜群です。実際、大分の湯布院にあるログハウスのペンションで、真夏の午後 2時頃、外は汗かくほどの暑さなのに東側にある部屋はヒンヤリしていて、驚きました。

 予算や手間暇かかるかもしれませんが、このように丸太だけでなく、昔風な泥壁や漆喰壁もいいと思います。

(3)窓断熱について

 屋根や壁に興味なくても、窓は毎日開け、閉めする所ですし、誰でも関心あると思います。この窓の件については後で詳しく述べる項目がありますので、ここでは簡単に断熱に絞って書きます。

 予算を考えるなら、1枚ガラスのアルミサッシが安いです。しかし、チェックポイント2(予算の金縛りはどうなのか)でも参考例として触れました断熱サッシ(二重ガラス、三重ガラスなどの建具)を私は薦めます。私の外建具はログハウスのデザイン上、木製枠のペアグラスにしました。大阪時代も含め、今まで1回もペアグラスのある家に住んだことのない私にとって、3シーズン過ごしてみて、その威力を実感しました。

  1998年1月はこの長崎でも雪の降る日もありましたが、室内で寄せ鍋をしても、窓は結露しませんでした。大阪のアパートはシングルガラスでしたので、台所で料理している時や風呂の扉を閉め忘れ時など、隣の部屋の窓まで結露していました。この差はちょっとした驚きでした。

 また、このペアグラスは防音効果にもなります。私の家の数百メートル下に高速道路(長崎自動車道)があります。窓を開けると、騒音がしますが、このペアグラス窓を閉めますと、全くと言っていいほど音は聞こえません。正直申し上げて、私は事前に防音効果まであるとは知りませんでした。お金は少しかかりましたが、断熱効果、デザイン、防音効果からして、今は大満足しています。

 予算は伴いますが、是非ともこの断熱窓はプランニング段階の検討の一つにされたらどうでしょうか。

 
(4)床下断熱について

 「足下から冷える」と言うことを聞きます。基礎の部分には換気を良くするために金網式の換気口があります。真冬期、外から冷たい空気がそこから基礎内部に入りこみ、さらに床板に伝わります。全体の温度が冷えれば、それなりに床板や畳も冷たく感じます。しかし、床下断熱材をを張らなければ、直接外部冷気が伝わりますので、さらに冷たく感じることでしょう。予算もそんなにはかかりませんので、床下断熱材を張られたら、いかがでしょうか。

 私の家は床下に5センチのロックウールが張られています。また、断熱材は別の効果があることも体験しました。ログハウスは基礎内部にある通しボルト(丸太の上から下まで、長いボルトで止めてある)を数ヶ月ごとに締める必要があり、その移動時に床下で頭を打ちやすいです。この断熱材は当たっても痛くなく、頭の保護にもなっています。

 かなりのスペースをさいてこの「断熱は軽視しない」のチェックポイントを書いてきました。この項目の冒頭にも書きましたが、私たち素人はこの断熱問題はあまり深く考えないで、設計士や住宅メーカーに頼んでいることでしょう。住んでみて始めて、このことの重要性やお金がかかることを実感すると思います。

 私は多少時間や費用がかかろうとも、この断熱の問題は一生のことですから、家の格好や間取りよりも、検討して頂きたいテーマだと思います。

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