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聞いた言葉・第152回目、予定調和はおもしろくない

予定調和はおもしろくない

  この言葉は、以前から良く見聞きする言葉でした。でも、なんとなく雰囲気は分かっていても当初私は、この言葉の持つイメージより別に何か深い意味があるのだろうかと思っていました。それで、まずは予定調和のみの意味について国語辞典の大辞泉で調べると、次の<>内(小文字の)1,2,が書いてありました。ただし、今回のページでは、2,の意味が主です。

予定調和=1,ライプニッツの哲学で、宇宙は互いに独立したモナドからなり、宇宙が統一的な秩序状態にあるのは、神によってモナド間に調和関係が生じるようにあらかじめ定められているからであるという学説。→モナド  2, (日本社会で)小説・映画・演劇・経済・政治等広い範囲で、観衆・民衆・関係者等の予想する流れに沿って事態が動き、結果も予想通りであることをいう。

 つまり、予定調和の結果は、日本社会において多くの方々が予想されている範囲内の企画や展開、あるいは想像の枠内での結果を求めて物事が動くことを意味しているように思えます。今回の言葉=予定調和はおもしろくないと言うことですから、当然、先の意味の否定語句となります。

 また、辞典にある通り小説・映画・演劇などの世界では、予定調和はおもしろくないと言うことから逆に多くの大衆を驚かせるために意表を突いた展開を行い、それを”サプライズ”とも言って、もてはやされてもいるようです。

 ただ、これが先の世界だけなら「面白い芝居だった」とか「予期しない展開の映画だった」と高い評価を得る場合があります。しかし、いったん社会生活(仕事、地域や親戚付き合いなども含めて)での話しになると、全部がぜんぶ評価されない、むしろ敬遠される場合も多々あるかと思います。

 今回の言葉と、かなり意味も本質も違うのですが、私の聞いた言葉シリーズに「反対意見にも真理あり」、「ノボセモンを大事にする」と言うページがあります。何故このようなページを書いたかと言いますと、仕事場でも地域でも何かの会合があり、全体の雰囲気と違う意見の場合、かなり勇気がいる、あるいは嫌われることを覚悟して述べたり行動しなければならないことを見聞きしたからです。また、これらは、けっこう日本国内でも多い現象ではないでしょうか。

 逆に、先輩達が作ったデータベース、それ基づく従来型の発想と企画、経験した範囲内での行動をすれば、人から嫌われることも大きな失敗も少ないかもしれません。(この思考・行動様式は一般には「官僚主義」とか「お役所仕事」との言葉にも似ている)しかし、果たしてそれが万人に賛同(=会社の場合、商品がヒットするも同意義)が得られるのか、どうかは別問題だろうと思われます。

 この種の思考や行動を仮に予定調和と同意語だったとします。実は、このことが会社ならば商品開発や販売戦略にも影響を与えているような気がしてなりません。やや脱線気味の話しになりますが、例えば(かつて日本の独壇場だった)電気製品分野で(シェアの)追い上げ(一部は日本を追い抜き)している東南アジア勢などと対比すれば分かりやすいのではないでしょうか。

 この現象は、一般に言われている単に「労働市場が高い、低い」の差だけではないようにも感じます。つまり、日常の操作で必要あるか、ないか分からないような高機能・多機能化に力を注ぎ、かえって使いにくくなったことは別としても、商品そのものが予定調和の範囲内開発ではなかったのではないでしょうか。(テレビなどの操作リモコンボタンで何十個とあるのは、その見本みたいなものに見える) 

 これらは、結局のところ肝心要の”使いやすさ”や”シンプル・イズ・ベスト”の精神を忘れた従来発想の商品のようにも見えてきます。従来型思考だけなら、いずれはどこの会社でも力を持ってくるでしょうし、そこと太刀打ちできないようになってきているとも思えます。ただし、原因がこれらだけの問題ではないのは当然のことです。

 あと、もしも会社や役所でも予定調和しか出来ない環境は、突き詰めて考えていけば今までの学校教育あるいは、その後の仕事場での研修などにも行き着くのではないでしょうか。それは一人ひとりの個性を大事にしない、まるで金太郎飴みたない、同じような考えと行動しかしない人作りが、今まで優良企業(=儲かる体質の会社)との幻想を持ち(一時期はそれでも良かったのかもしれないが)全員が金太郎飴では、逆に様々な諸問題に対応できない体質になってきたのではないでしょうか。

私の関係ホームページ
 ノボセモンを大事にする
 反対意見にも真理あ
 毒にも薬にもならない話し
 金太郎あめ教育の破綻

 同じような発想・企画・行動で満足する狭い範囲内の人ばかりなら予定調和でもいいと思われます。しかし、そのようなことばかりでは、多くの大衆にはうけない時代にもなっているような気がします。その中で、今回の言葉=予定調和はおもしろくないとするならば、何が求められているのでしょうか。

 それは、その時その場では「あの人は、他と違っている人ね」と思われても、やはり、個性を大切にして独創性のある発想・企画・行動力が、必要とされているのではないでしょうか。これは、結局ある意味、「その場の空気に合わせていけばいい」と言う、これまでの日本人的思考や行動さえも問われているのかもしれません。
 

(記:2012年9月17日)
  

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