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アメリカ車は、なぜ本国でも売れないのか?

  私は、様々なマスコミ報道その他で詳細なことは知らなくても、アメリカでヨーロッパや日本を始めとするアジアなどの外国車が、かなり売れているなどの大雑把な情報は以前から知っていました。また、その理由もアメリカ車に比べ小型ながら低燃費で高性能だからみたいな報道内容をそのまま漠然と、「へえー、そうなのか」と信じていました。

ロサンゼルス、ダウンタウンの高層ビル
(ウォールト・ディズニー・コンサート・ホール前)

フリーウェイ (片側6車線に
プラス側道の4車線、合計片側10車線)

リンカーン(タウン仕様)車
ザ・ビバリーヒルズホテル前のサンセット大通り

 そして、2008年11月21日始めてロサンゼルス国際空港からビバリー・センター近くにあるホテルまで走行しました。また、それから日本に11月23日に帰国するまでの間、ロサンゼルスあるいはシール・ビーチ市内観光のためアメリカ車にも乗車させてもらいました。これらの走行時に、アメリカの車社会は、やはり「聞くと見るとはでは大違いだなあ」と、つくづく思いました。

 その中でも、主に二つの事柄が印象深く残っています。一つ目がフリーウェーが片側6車線(ところによっては側道入れたら片側合計10車線、右側の上から2番目写真参照)と言う”車大国”を絵に描いたような光景でした。それは、幅の大小はありますが、飛行場に行って2本の滑走路が並行して延々何十キロ、何百キロと続く感覚にも似た雰囲気でした。

 二つ目が、その片側6車線の道路でも渋滞になり前後左右をざっと見ただけでもトヨタ、ニッサン、三菱、ホンダ、スズキ、メルセデスなどの外国の名前の付いた車が多かったことです。もちろん、ここはアメリカの道路ですから自国の車も同じか、それ以上の台数で走行はしていました。

 でも、改めてこれほどまでに外国車が多いのかと言う、ある種の驚きも感じました。また、逆に考えるなら日本で例えば私が住んでいる長崎県の国道で前後左右の車が外国車ばかりと言うのは何か特別な事情でもない限り経験することは、まずありえないことだなあとも思えます。

 そして、直ぐに「なぜ、このような実態になっているのだろうか?」と言う至極単純な疑問が浮かびました。アメリカの車メーカーと言えばビッグ3の言葉で代表されるような(ゼネラル・モータース(GM)、フォード、クライスラーは、私のような者でも覚えていますし、かつては世界の大企業ランキングの上位をいずれも占めていたのではないでしょうか。

 そんな巨大な車メーカーを擁しながら、なぜ本国アメリカで、こんなにまで外国車のシェアになっているのか? なぜ、自国の車より外国車が人気あるのか? なぜ、車メーカー各社が経営破綻状態になっているのか? など、アメリカから伝わっていた報道内容含めて、いくらでも疑問がありました。

 例えば、私のこの旅行直前の2008年11月18日、アメリカの議会で車メーカー(ビッグ3)の証言がありました。極簡単に言えば、この時、各社は議会に対し「自動車産業救済策を要望するため」の発言をしていました。(後日談として、この時ビッグ3の会社首脳が自家用ジェット機でワシントンに乗り付け、そのことでも議会でひんしゅくを買ったのが有名ですが) 

 この時、会社首脳たちは経営破綻状態に陥った原因として不況とか金融危機や資金繰りなどのことを言っていたと思います。そして、議会に対し、自分たちを救済しなければアメリカ経済は危機的状態になるぞと言うまるで脅しみたいな発言内容だっと記憶しています。

  これらの報道を見て、私は殿様商売を続けた”お殿様”が「俺の造った車や商売方法は悪くない。俺の造った車を買わない者たちが悪い。こんなに偉い俺を助けなければ下々の者が困るぞ」みたいに聞こえました。はたして破綻の原因は、ビッグ3首脳の言う通りだったのでしょうか。

アフターサービスが悪いのも原因の一つでは

 これらについて、別角度から数多い原因の幾つかをアメリカ在住で今まで既に車を16台も乗り換えた日本人ハイヤー運転手さんから、この国の車事情の一端を含めて教えて頂きました。

 アメリカ車が本国でも売れず、その替わり外国車が売れる原因として「日本車やヨーロッパ車が排気量や性能がいいと言うこともが当然あるが、根本原因はアフターサービスが悪いことだ。アメリカ車は売ったら終わりみたいな売り方だ。その点、外国車(日本車やヨーロッパ車など)は義務付けられているパーツの補給含めてきっちり守っているから購入後も安心して乗れるからだと思う」との話がありました。

 まあ、全ての産業分野で販売不振の商品が、一概に一つや二つの要因ではないとも思われます。ただ、今回のように現地でアフターサービスなどの実態を具体的に聞きますと、「あー、それも大事な要素だなあ」と改めて思いました。

お客様が「買いたい」と思わせる車を造っていなかったのでは

 つまり、アメリカの車の売り方は、利幅の大きな例えば大型車、高級車みたいな車ばかり造り、そして「売ったら終わり。後のクレームなどはコストがかかるばかりだからしたくない」みたいなやり方と思えました。これでは一般のユーザーが欲している低燃費、高性能、エコ対策の車などとはほど遠い車種=「売れない車」を造っていたのではないかとまで考えてしまいます。

 このことは表現に変えるとアメリカの車メーカーは、一般ユーザーの要望を満たす車造りより、「自分たちだけがもうければ、それで良い」と言う、ある意味資本主義の究極的な考え方だったのだなあと思われます。そこには日常ユーザーが車運転しながら思っている気持ちや故障して困っている顔などは、あまり浮かんでいなかったのではないでしょうか。その背景からすればアメリカ車販売不振も併せて現代アメリカ資本主義の病根も非常に深いと思われます。

 既に書きましたが、アメリカと言えば車大国で車優先の国とも言えますし、同時に戦前戦後、日本の各種製造メーカーも長年学んだ”物造り”のお手本の国でもあったはずです。この物造りの基本は、要の東西・時代を超えて「お客様のために使いやすくて高い信頼と高品質の製品をつくる」ことにあるのではないでしょうか。そのたゆまない努力の結果が、商品の販売促進であり利潤だと私は思います。間違っても、その逆からではないと言えます。

 あと、このビッグ3の破綻問題などを報道する日本のマスコミは2008年当時盛んにメーカーの従業員の就業条件など高コスト体制が全ての原因であるかのように繰り返し何回も報道していました。私も日本を発つ前は、「へえ、そうなのか」と思っていました。しかし、その直後のカリフォルニア旅行時、先の日本人運転手さんに話を色々と聞いて、このマスコミ報道は意図的とも思える位の一面的なもので真の原因に迫っていないことは、既に述べたように明らかに分かりました。

結局”物造り”の心を忘れ、もうけだけに走ったのでは

  今回のテーマ「アメリカ車は、なぜ本国でも売れないのか?」のまとめは、結局のところ、”物造り”やアフターサービスの心を忘れ、消費者が求めている低燃費、高性能、エコ対策など、「あの車なら買いたいなあ」、「少々高くてもアフターもいいから買って乗ってみようかなあ」と思わせる車そのものを市場に提供できなかったのが、根本原因と思われます。
私の関係ホームページ
 カリフォルニア旅行記』(目次ページ)
 フランスあれこれ』(目次ページ)
 国家管理の資本主義
 カジノ経済、ギャンブル経済の宿命
 資本主義の暴走、資本主義の暴力
 経済=経国済民

 悪貨は良貨を駆逐する(グレシャムの法則)

 真実を自分で探す時代

 それと同時に、破綻原因の打開策に、これらのことを真正面に据えているかどうか、まだ結果は出ていませんが、かなり疑問符の付くような状態に見受けられます。これは、利幅の大きなもうかる車しか造りたくないと言う考えが、まだまだ根底にあるとするなら、一時の”息つき”まがいのことはできても永続的な展望は難しいのではとも思えます。

 突き詰めればアメリカ現代資本主義の様々な病根そのものの打開策に繋がるかの見通しも、なかなか今まで通りに行かないのではとも考えられます。このアメリカの車メーカーのやり方は、日本においては反面教師でもあります。非常に苦しい経済状況下で歯を食いしばるような努力を日夜続けておられる多くの日本の中小零細企業の方々が、”物造り”の心を忘れておられない基本姿勢は、今までもこれからも間違いがないものとも思えました。

(掲載日:2009年11月3日)

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