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聞いた言葉・第115回目、『国家管理の資本主義』

国家管理の資本主義

 アメリカは誰でもご存知の通り、自由資本主義の国の代表みたいに言われてきました。また、一般に サミットは先進国首脳会議とも言われ世界の資本主義国の、それこそ旗振り役の国々です。そのような国の首脳から、今年 (2008年)10月次々と(テレビ・新聞報道の概要で) 13日「イギリス政府は最大で370億ポンド(約6兆4000億円)を大手英銀3行の自己資本を増強するため公的資金を投入する」、 「ドイツは公的資金の投入と銀行間取引の政府保証を中心に総額5000億ユーロ(約68兆円)金融危機対策を導入する」、 14日「ブッシュ大統領は金融危機対策で公的資金で金融大手などに計2500億ドル(約25兆円)の資本を注入する」 などと発表しました。

 その他のサミット参加国も様々な公的資金(税金)注入、政府保証、その他の対策を実施しています。 (日本でもバブル崩壊後の90年代に通称・金融安定化法を制定し公的資金で大手銀行などを救済しました)  このような各国の発表により世界金融恐慌みたいに連続して下がっていた株価も一気に大幅急反発したみたいな報道が続いていました。

 いかに世界恐慌を起こしたくない、あるいはこれらの金融会社で働く従業員の雇用を守るなどの大義名分らしき理由があったとしても、 自由主義経済を標榜しているアメリカを頂点にサミット各国で実施されている金融対策は、これはもう本来の資本主義経済のやり方ではないと思われます。

 ちなみに国語辞典の大辞泉によると「自由経済=各経済主体の活動が各々の自由意志に任され、国家などによる干渉や規制を受けない経済体制」と 書かれてあります。 つまり、この国語辞典にも書かれていない国家管理・国家統制の”自由経済”が先進資本主義国でおこなわれているのです。「国家管理の資本主義」の用語に対し、 新たな経済用語か経済体制の新呼称が必要なのでしょうか、私には分かりません。

 どこの大企業の経営者も、自分たちの儲ける時だけは政府に対し「規制緩和を、構造改革を、小さな政府を!」など声高に叫び、損する時には「公的資金の投入で救済を!」と言う本当に得て勝手なやり方だと思います。アメリカの経営者の中には、調子の良い時には年収などで何億何十億も得ていたそうです。

 それらが当時問題にならなかったのは、 ”自由経済”だからでしょう。それを国家管理する時、世界の誰が認めると言うのでしょうか。もしも 中小零細企業の経営者も言えるなら「儲けの時には自分に、損すれば政府で救済を」と おっしゃりたいはずです。こんなやり方が通用するなら、経営能力がなくても会社経営をしてみたいと思う人もいるのではないでしょうか。

 今回の世界規模の金融危機を招いた原因はアメリカ発で、しかもその大部分はサブプライムローンを始めとする「カジノ経済、ギャンブル経済」 (この用語は『聞いた言葉シリーズ』第114回目の「カジノ経済、ギャンブル経済の宿命」参照)とも言われています。 つまり、分かりやすく言いますと、博打式の金融や経営方法をした会社を庶民が働いて納めた分の税金も含めた公的資金で、賭場の負け代を払ってやっていることと同じではないでしょうか。

 あと、このような経営者などは特に国による規制(社会主義的手法)などについては、ことごとく目の敵にして”自由を、規制緩和を”と叫んでいたはずです。その敵対するような(各国政府の)手法に対し彼らは助けを求めたとも言えます。このような姿に対し1991年のソ連邦の崩壊あるいはその前後の東欧諸国の政変時、「これは資本主義の勝利だ。資本主義は究極の経済体制だ」(資本主義万歳論)などと、日本の経済学者や政治家の一部は言っておりましたが、この人たちは今どう言うのでしょうか。

  また、実際は「カジノ経済、ギャンブル経済」なのに、名称だけは「規制緩和」や「カイカク」などと称して政府と一緒になり、あたかも景気回復の原動力みたいに宣伝・応援報道してきたマスコミのあり方も大きな問題と言えます。さらに当時から、この種のことを予見して警鐘を鳴らしておられた方々の意見を黙殺し公平に取り上げなかったマスコミの姿勢も二重三重に問われているのではないでしょうか。

 ここ近年のアメリカのサブプライムローン・住宅バブルの破綻の結果、最悪自殺やホームレスに追い込まれたのは、その人だけの責任ではないと思われます。庶民を追い込んで大儲けした経営者などは責任ないと言うのでしょうか。また、この現象はアメリカ一国だけではなく、今回の金融危機前から、どこの国でも似たようなことが起こっていることとも思われます。

私の関係ホームページ
 カジノ経済、ギャンブル経済の宿命
 経済=経国済民
 資本主義の暴走、資本主義の暴力
 日本売り

 悪貨は良貨を駆逐する(グレシャムの法則)

 真実を自分で探す時代

  一部の人だけが大儲けできる強者の論理でおこなってきた”自由経済”の破綻を、「国家管理の資本主義」の手法=多くの庶民の税金で救済されると言う現象は本来の資本主義からすれば、やはり異常な状態だと私は思います。

 あと、現在の状況は一時期「国家管理の資本主義」手法で助けられても実態経済の弱さもあり、全く楽観視できないとも言われています。そのような状況なら経済政策そのものも、なおさら原則が大切とも思われます。今でもなお放置状態の巨大投資マネーなどは石油や穀物市場などをさまよい、国民生活にも重大な影響を与えています。

 今回のアメリカ発の金融危機、その後の「国家管理の資本主義」手法などは、今の「カジノ経済、ギャンブル経済」などアメリカ式経済を根本から変えない限り、また、同じようなことが今後起こりうることを教えているような気がします。

(記:2008年10月18日)

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