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聞いた言葉・第211回目、世界の共有財産

世界の共有財産

 今回の言葉は、最初、ヨーロッパ3空港調査旅行(1986年2月)時に、通訳の方から教えて頂きました。ご参考までに、「共有財産」と「世界遺産」について、大辞林に解説してありますので、次の二つの<>内を参照願います。

モナリザ (ルーブル美術館の絵葉書より)
オルセー美術館
ゴッホ作
コルドヴィルの藁ぶき屋根の家
オランジュリー美術館 モネの睡蓮(一部)

 共有財産(きょうゆうざいさん)複数の人または団体が共同で所有する財産。(大辞林より)

 <世界遺産
(せかいいさん)=地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重な資産。世界遺産保護条約に基づいて、世界遺産委員会が定める。文化遺産、自然遺産、複合遺産の 3 種類に分けられる。 → 世界自然遺産 ・世界文化遺産 ・複合遺産 (大辞林より)>

 
私は、今まで(2018年現在)ヨーロッパに6回、アメリカに1回行ったことがあります。 (上野の7編の海外旅行記は、海外旅行記 大もくじ」ページから参照)  そして、その中でも一番最初に海外旅行したヨーロッパ3空港調査旅行(1986年2月)は、やはり、見るもの聞くもの食べるもの初めてということもあり、かなり鮮烈と言いますか、印象深く覚えています。

 当然、その時、パリでは、ルーブル美術館(モナリザ、ミロのビーナスなど多数)はじめ各博物館や美術館、ローマでサンピエトロ寺院(嘆きのピエタ像など多数)、ロンドンではロンドン塔(各王冠など)を見て回りました。

 私は、そのような場所で見学しつつも、やや驚いたことがありました。どの都市の美術館・博物館・教会でも、学生時代の世界史や美術の教科書に写真付きで紹介されている、まさしく”世界の宝物”と言うべき美術品・工芸品を始め建物内外の写真撮影が、ほぼ全て自由でした。

 例えば、ルーブル美術館の至宝というべきモナリザも、オランジュリー美術館にあるモネの大作、睡蓮(すいれん)も写真は、自由でした。ただし、フラッシュやストロボ使用は禁止だったかもしれません。これが、日本にある公立の美術館ならば、全くダメではないでしょうか。そのような非常に価値観のあるものでなくても、県か市の役所(教育委員会や各館など)に事前に展示物撮影の許可申請文書が必要でしょう。実際、私も何回となく申請書に書いて印鑑を押して、提出したことがあります。

 先にも述べた”世界の宝物”と言うべき美術品・工芸品を始め建物内外の写真撮影が、ほぼ全て自由にできるので、同行して頂いた通訳の方へ、私は尋ねました。「日本ならば撮影はダメですよね。なぜ、こちらは良いのですか?」、そうしましたら「ヨーロッパでは、世界の共有財産との考えが根底にあって、美術館や所有者だけのものではない。だから大いに写真撮って、活用してくれと言うことではないかなあ」との返事をされました。

 この通訳の答えられた「世界の共有財産」の言葉は、(2018年現在で)既に32年前ですから、もしかしたらヨーロッパでも考え方や美術品保全のためのセキュリティー強化策などに変化もあったかもしれません。しかし、私は、その後も海外旅行記 大もくじ」ページの通り、旅行には行ったのですが、そう大きな変化はなかったと実体験しています。

 ご参考までに、日本国内のことですが、1998年11月27日付け施行で次の<>内のことも掲載されています。 <文部科学省のサイトより、 美術品の美術館における公開の促進に関する法律等の施行について >

 あと、私は、”世界の宝物”の展示が、ほぼ自由に撮影できたのですから、セキュリティー面も気になりました。先の通訳の方の話によりますと、「当初はモナリザ嘆きのピエタ像も直接展示だったが、心無い人が傷付けたため、どちらも修復後はガラスケースに入れられて警戒も厳重になった」とのことでした。それで、「私は、どちらともガラスケース越しに見たのだなあ」と残念に思いつつも、”世界の宝物”を守りながらも、それでも「共有財産」の精神もあり、結果、写真を撮らせてもらったのですから、それには感謝したものです。

 このように何事も、全部がぜんぶ「性善説」みたいにはいかないのでしょう。しかし、当初よりは様々な制限付きであっても、「共有財産」の精神は生きて、今でも発展しているのではと実感もしました。また、日本国内においても、ある博物館では、「常設展示場での撮影は全部自由」、「特別・企画展では撮影禁止ばかりではなく、数点は撮影OK」でした。このようなことは、見学者にとってはいいいなあ、記念写真にもなるしとも思いました。

 あと、私の住んでいます長崎県内おいても、「明治日本の産業革命遺産<端島炭坑(軍艦島)、三菱長崎造船所旧木型場(きゅうきがたば)など(登録年:2015年)> 、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産<原城跡、大浦天主堂など(登録年:2018年>」の関係で、それこそ世界的な遺産が増えてきました。

 私は、このページで分かりやすい例として、「世界の共有財産」の写真撮影を主に書いてきました。しかし、その件も含めて、次の諸事項も、整備(完備)しなければならないのではとも思っています。そうでなければ、世界からお客様を気持ち良く迎え、そして帰国されれば長崎の世界遺産を褒めて宣伝して頂くようになっていくのでしょうか。

 (1)交通アクセスの整備(完備) 、 (2)最低でも3〜5カ国語の案内表示板・パンフレット・ホームページ類 、 (3)写真撮影は原則フリー 、 (4)トイレ・休憩所なども含めて現地の整備拡充 、 (5)フリーWi-Fiの完備 、 (6)外国語のできる現地案内人 など。 (念のため、あくまでも私が見た範囲内ですが、ヨーロッパの世界遺産は特別な地域や施設を除き、全部ではないものの、かなりの部分で先の諸事項は整備されています)

私の関係ホームページ
 海外旅行記 大もくじ」ページ
 パリの美術館シリーズ・ルーブル美術館
 パリの美術館シリーズ・オルセー美術館
 パリの美術館シリーズ・オランジュリー美術館
 聞いた言葉シリーズ「パリは見なくてもルーブルは見るべし
 聞いた言葉シリーズ「炎の画家ゴッホ
 ベルサイユ宮殿(ヴェルサイユ宮殿)など

 昔から「産むよりも育てるが難し」との言葉もあります。世界遺産運動は、登録されたら終わりではなく、登録されてからが本当の運動とも思えます。ヨーロッパでは、その運動を世界遺産に「なる、ならない」関係なしに長年やって来られたからこそ、現在の姿があり、それを見たいために世界各国から、何十万・何百万人の方が訪れておられると思います。

 「世界の共有財産」とか「世界遺産」とか、口では簡単に言えます。しかし、そこまでになるには、名実ともに多くの方々から評価して頂けるような、永遠に続くような努力と覚悟が求められているような気もしています。


(記:2018年8月12日)

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