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聞いた言葉・第92回目、『デジタル時代の鳩時計』

 

デジタル時代の鳩時計

 今回のこの言葉は、昨年(2007年6月29日)封切られた映画ダイ・ハード4.0(Live Free or Die Hard )の中で有名になったセリフです。悪役が自分の言い出した取引に応じない主役のジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィルス)に対し嘲笑しながら「ジョンよ、お前はデジタル時代の鳩時計だ」 (John, You're a Timex watch in a digital age.)、 「お前は負けだ」(You're a gonna lose.)と言うシーンがあります。私は英語は全然出来ないのですが、スクリーンの日本語字幕で、このセリフを見てなかなか面白い表現だなあと思っていました。

 そして、その後「デジタル時代の鳩時計」の英語は何だろうとホームページなどで調べてみていたのですが 最初の頃、映画の題名とともに「鳩時計=A cuckoo clock」の文字からアメリカのサイトなどで検索していました。するとホームページ上で出てこないので おかしいなあと思いながら、しばらくして、それは「Timex watch(タイメックス時計)」の日本語訳と分かりました。

 そうしましたら、なぜタイメックスのことを「鳩時計」と日本語訳するのか 分からずフリー百科事典『ウィキペディア』で調べると、「アメリカに残る数少ない時計メーカーとして知られ、主に低価格な腕時計を製造している」、 「かつてはアメリカ製腕時計の代名詞であり、製品はアメリカで生産されていたが、現在では多くが東南アジアなどで生産されている」 「現在では (中略) スポーツ用デジタルウォッチや、非常に低価格な三針クォーツウォッチを中心に販売している」 と書いてありました。

映画ダイハード4.0パンフレットの表紙より

 あーそれで、このような日本語訳になったのかと思いながらタイメックス社のサイトを見ていましたら、 なるほど、現在ではちゃんとデジタル時計も製造・販売されていました。

 このダイハード4.0については、映画館に行かれた方はもちろんのこと、そうでない方もテレビなどの派手な宣伝で概要ご存じだと思いますが、サイーバーテロと、それらとの闘いを描いています。このセリフは、映画の中盤前頃の場面で出てきます。

 テレビの宣伝効果も事前にあったためか、このセリフを字幕で見た時、これからサイーバーテロ集団(仮に「デジタル万能集団」)と、従来通りのデジタルが苦手なアナログ手法のジョン・マクレーン刑事との本格的な戦いが始り、映画全体がこんな調子で進んでいくのだなあとも思えました。実際、その通りに展開していきますが、攻撃してくるヘリコプターを車でぶつけるシーンや高速道路の高架下までジェット戦闘機が飛ぶところなど、いかにもアメリカ映画らしい派手な場面がありますが、私は別な面で気になるセリフもありました。

 それはサイーバーテロの「ファイヤーセール」攻撃の手口をコンピューター・プログラマーのマット・ファレル(ジャスティン・ロングが)解説するところです。概要、彼は「ファイヤーセールとは3段階あり、1段階目=交通網の遮断、2段階目=金融・通信網、3段階目=ガス、水道、電気、原子力など公共機関を制御して意のままに全部ダメにする。つまり、”売りつくして全部無くなる”と言う意味だ」、さらに後で「システムは一つダメにしても回復できるが全部のシステムをやられると崩壊する」、「システムのプログラムを作るのには大勢必要だが、操作(映画の場合、サイーバーテロ)するには少人数でいい」みたいなことを言っています。

 それに対して、マクレーン刑事は「そんなことになっても各省庁が対応できるはずだ」と反論するのですが、すぐさまマット・ファレルが「でも、ハリケーン災害時に水を届けるのに5日間もかかった」と言い返していました。

 また、別のプログラマーのワーロック(ケヴィン・スミス)の地下室でCB無線機(Citizens Band Radio=個人用の無線機)を見つけたマクレーン刑事が「CB無線機か? 君達にはローテクだろう」と言ったところ、ワーロックから「その無線機はなあ、この世の終わりまで使えるよ」と反論されていましたが、この無線機は後刻重要な連絡で役立ちました。

 あと、悪役がマクレーン刑事の長年かかって貯めた年金や退職金を一瞬に消去してしまい、そこから取引の言葉をいう場面がありますが、これも印象に残りました。このように映画の話しではあるのですが、現在の実世界と同時進行みたいな言葉や用語もあり、なんか全く絵空事みたいに思えない感じがしました。特に、日本はサイーバーテロ攻撃を受けていないのに消された年金問題が何千万人にも及んでいるのですから。

 デジタル=コンピュータ化は「便利だ、時代の先端だ、無駄のないものだ」とか称されているのですが、映画のストーリーとは言えテロ集団がその主要部分を制御すれば電気やガスなどのライフラインも、ジェット戦闘機でさえも逆の方向に使われることを暗示しています。日本でもテロ攻撃は起こらないように防御するのは当然ですが、はたして大地震や台風などにも、これらのシステムは対応できるようになっているのでしょうか。

 私は1995年1月17日の阪神淡路大震災を池田市で経験しました。後日、神戸の方にも友人をたずねて行きましたが、広場などで暖をとるにも炊飯するのにも皆で薪で火を炊いておられる光景を見ました。また、夜寝るにしても寒い時季でしたので当然電熱器具はなく、昔ながらの湯たんぽが活躍したそうです。電気だけでなくガスも水道も、あるいは電車区間の寸断状況も含めて様々な影響がありました。

 私は、この大地震から通常何にも思わずに使用しているライフラインなどが止まれば、このようになるのだなあと改め実感しました。現代日本は、映画のようなサイーバーテロでなくても自然災害でも電気が止まっただけで何も出来ない様なシステムになってはいないのでしょうか。私は、便利になることを全て否定しませんが、それでも何らかの理由で最悪のことが起こったとして国全体でも個人でも、その備えは出来ているのでしょうか。

 石油埋蔵も「あと70年で枯渇する」みたいに報道されています。何でもデジタル=コンピュータ化、電化ばかりではなく使えるものなら代替えとして例えばエネルギーや燃料ならガス、薪、木炭、練炭、石炭などはマダマダずっと使えるでしょう。その他の分野でも見直せば先人が利用していて現代人が捨て去ったようなものも(アナログ機能が主と思いますが)ちょっと工夫すれば今でも使える機器があるような気がします。今回取り上げた鳩時計も電気がなくても時計本来の機能を果たしますし、メンテナンスさえすればずっと使えます。

 私は映画について、その時間楽しめればいいと言う考えの持ち主ですからダイハード4.0も楽しみながら見ました。でも、何か実生活で考えさせられたような気もしました。


(記:2008年1月7日)

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