14)おひつ 日本、木曾さわら
生まれも育ち田舎者の私にとって、学校給食以外は、あまりパンに縁がなく、いつも3食ずっとご飯でした。また、農家でしたので、家族一緒に植えて、秋に収穫した新米を食べるのは、大きな喜びでもありました。
炊き上げたご飯を保温するなら、炊飯ジャーなどがありますが、私は、ご飯に関しては電化製品は、合わないような気がします。ジャーは、いつも暖かですが、あの臭いとご飯の食感(パサパサした感じ)が、なじみません。もっとはっきり言えば、ジャーのご飯が、おいしいと思いません。
私の子どもの頃は、あまり電化製品もなく各家庭当然のごとく冷やご飯は、おひつに入れ、自宅で、または、田んぼまで持ち運び食べていました。私は、おひつの歴史を全く知りませんが、江戸時代以前よりも前の相当昔から利用されていたのではと思います。瑞穂の国・日本人は、遠い昔から、なぜわざわざ、炊き上がったご飯を木の器(おひつ)に移し変えていたのか。
科学的に証明するものはなくても、炊き上がったご飯をおひつに入れることによって、余分な水分やいやな臭いを木が吸収し、冷やご飯になってあったかさはなくなっても、逆に米本来の持つ甘味糖分が増すことを経験として、昔の人は知っていたと思われます。実際、私も使っていますが、冷やご飯になっても嫌な臭いもなく、しっとりとしていて、おいしく食べられます。
また、このおひつの作りにも、私は、驚嘆しています。このおひつは、買った時には、もちろん板どうしピッタリしています。しかし、長年使っていると、何日も未使用時、板がゆるんで薄い紙が通るくらいになります。しかし、炊きたてのご飯を入れたり、または、水を入れ続けて、しばらくすると、板どうしピッタリ重なり合い、水が漏れません。最初から、このような木の収縮を計算して、丸いおひつを作っているのか、職人技のすごさを感じています。(記:2001年6月16日)
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