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チェック・ポイント10ログハウスの常識は本当か

 私は7年前位から本格的にふたつのログハウスの専門誌を見たり、全国のモデルハウス、ペンション、別荘や自宅など、約70数棟ほど見てきました。そこで、このチェックポイント10ではログハウスに絞ったテーマで、疑問など書いてみました。特に、ログハウスに限って「これが定番」とか「これがないとログハウスではない」みたいな「常識」と言いますか、「先入観」みたいなものがあります。 後で、詳しく一つひとつ述べるとして、まずはその「常識」みたいになっている事項を取り上げます。

(1)新素材の瓦屋根
(2)とんがった突き出し屋根
(3)急角度の屋根勾配
(4)妻壁一杯のガラス窓
(5)外材の方が安い

などです。はたして、この「常識は」は本当にそうでしょうか。

(1)新素材の瓦屋根?
 家の見学をしていて、まず、最初に目に入るのが屋根でしょう。屋根は雨水から家を守ってくれるだけでなく、見た目の印象も大きく左右します。また、チェック・ポイント4(断熱は軽視しない)でも書いた通り、断熱の問題でも、屋根は最重要な役割を果たします。私が見学したログハウスはその多くが、新素材瓦です。

 この新素材の屋根は従来からある粘土瓦、陶器瓦、セメント瓦、金属製瓦ではなく、ガラス繊維にアスファルトをコーティングした物とかセメントと特殊鉱物を混ぜ合わせた物などと、各社によって材質は様々です。材質を言うより、商品名が分かりやすいかもしれません。色やデザインも多種多様です。

 この新素材瓦がなぜ多く使われているのか、それは価格が安いのとログ(丸、角、D型など種類は多い)との調和から来ていると聞きます。それも勿論あるでしょうが、ログ・メーカーのモデルハウス、チラシやカタログがハンコで押したように、ほぼ全部新素材瓦なのです。結果、貴重な情報源であるログハウス専門誌掲載の写真も多くが、新素材瓦の写真ばかりです。これでは最初から施主としては選択の余地はないようなものです。

 私は新素材瓦の色やデザインはいいと思いますし、ログハウスにも良く調和しています。しかし、先に述べたチェックポイント4(断熱は軽視しない)と8(メンテナンス優先)で、この瓦の疑問符を書きました。

 長い年月をへれば、いずれは汚く変色する問題=再塗装、熱を持ちやすく野地板を傷めて屋根工事をしなければならない問題など、全部がぜんぶベストな瓦とはいいがたいこともあるのです。

 瓦は家全体に占める割合が大きいので、耐久度だけでなく、価格、デザイン、色などを総合的に考えざるを得ないと思いますし、いずれの瓦も一長一短あるでしょう。でも、ハンコで押したようなログハウスメーカーの展示場やカタログでなく、選択の余地のある各種の瓦仕様も考えて欲しいものです。また、施主側も「新素材瓦先にありき」ではなく、先入感から外れて、ゆっくりと瓦の質も問いかけられたらいかがでしょうか。 

(2)とんがった突き出し屋根?
 ログハウスで見られる屋根形状で独特なのが、丁度紙飛行機の翼を折ったような突き出し屋根です。私も最初の頃は「この突き出し屋根はログハウスだから当然なんだな〜、先輩のアメリカもカナダもそうなんだ」と思っていました。 しかし、元同僚でカナダ在住の友人が送ってくれた 2冊のログハウス専門誌の写真を見ると、この突き出し屋根は少数でした。むしろ、単純切り妻風が多く、寄せ棟と混合した形状もありました。また、93年10月スイスの山村グリンデルワルトを訪れる機会があり、シャレータイプ(スイス版ログハウス)の民家やホテルを見ました。一つひとつ数えた訳ではありませんが、ほぼ単純切り妻風で、この村の近くにある展望台のフィルストやクライネシャイデックの木造レストランもそうでした。結果、日本のログハウスに見られる突き出し屋根はただの格好なんだな〜と、思うようになりました。

 一つの疑問を感じると、次は色々と短所も分かってきます。まず、あの突き出し屋根はその形状からして、木、防水シート、断熱材、瓦など資材に無駄が出て、施工も時間がかかります。また、メンテナンス時に、はしごなど掛けにくく、作業性は良くないと思います。さらに強風時には風を巻き込みやすい形状とも言えます。

 「ログハウスは突き出し屋根が常識」と言うのは、私はむしろ言い過ぎだと思います。私のログハウスを作る時、設計士はかなり突き出し屋根を主張し、口論にもなりましたが、私は最初から「頑丈であれば格好は気にしない、絶対単純切り妻を」と言い続けました。見学者によっては「小屋みたい」「公民館みたい」と言われますが、私は本望です。元々ログハウスは丸太小屋と呼ばれていますから、当然です。 家の格好をどうこうするのはやはり最終的には本人の好みですから、これ以上言う必要はないことかもしれません。私のわずかな情報かもしれませんが、カナダの本やスイスの例を上げた通り、「ログハウスは突き出し屋根が常識」ではないのです。また、資材の無駄、メンテナンスや風対策のやりにくさもあること知って頂きたいと思います。

(3)急角度の屋根勾配?
 この急角度の屋根についても、前項(2)と同じように全国の住宅メーカーのモデルハウス、チラシやカタログのほとんどが、そうなっています。また、ログハウス専門誌の中に、これからログハウスを考えている人への特集記事の中に「ログハウスの屋根角度は10寸〔10/10寸)勾配で決まり」と書かれていました。 本当にそうでしょうか。

 屋根を急角度にするのは寒冷地の雪対策を除けば、その多くがロフト(法律上、ログハウスは総2階ができないため、小屋裏として利用する)を設け、2階部分の天井高を確保するためです。しかし、何も必ず「角度は10寸〔10/10寸)勾配で決まり」ではないと思います。チェックポイント8(メンテナンス優先)の屋根角度で述べた通り、一般的に足場のいらないギリギリの屋根角度として6寸(6/10寸)勾配でも、ロフトは作れますし、また、ロフトの天井高をもっと確保したいならドーマーも付ければ、さらにいいでしょう。

 「ログハウスの屋根角度の常識として10寸勾配」ではないと思います。チェックポイント8(メンテナンス優先)と重複しますので、詳細に書きませんが、もう1回メンテナンスのことと、ロフト天井高の確保もできることからも、この急角度(10寸勾配)屋根については考えていただけないでしょうか。

(4)妻壁一杯のガラス窓?
 屋根の次に高い位置にあるのが、妻壁です。その妻壁に一杯あるいは半分位の面積を使い、ガラスを張ったログハウスを多く見かけました。数多くのログハウスにこの大きすぎる窓が採用され、しかも、ログハウス専門誌にも「妻壁一杯の明るい窓、ここち良い光線」などと、ほめたたえて紹介されています。はたして、この妻壁一杯のガラス窓は「ログハウスの常識、正しい選択」でしょうか。

 私のような素人目にも明るさや採光をウンヌン言う前に、私は危ないのではと思いました。特に、阪神大震災後、地震があったら、あるいは野球などしていてボールが当たったら、飛んでもない割れ方をするのでは思いました。その時、もしも、付近に人が入れば大けがも予想できます。 

 妻壁は普通、漆喰壁あるいは板壁にして、間柱とさん木を交わして、壁を作ります。板壁なら内外釘で板を固定しますから、それだけでも、かなりの強度アップになります。家には前後左右の揺ればかりではなく、地震などでねじれのモーメントもかかる可能性もあります。その時、妻壁一杯のガラス窓と、この板壁の強度の差は火を見るよりも明らかなことでしょう。

 私の家の妻壁は普通よりは短い30センチ間隔で間柱を立ててもらい、さん木を交差させ、板壁を形成しています。その中に外枠で横幅50センチ、縦90センチの開閉式窓が左右に1個づつあります。妻壁一杯か半分位の窓にしては小さいかもしれませんが、朝日が昇る時には柔らかな光線も奥まで差し込みますし、日中見学に来られた方で「暗い」と言われた方は一人もいません。

 また、窓の掃除をしようと思い、板壁に直接はしごをたてかけてましたが、びくともしませんでした。この時、もしも妻壁一杯のガラス窓だったら、はしごはどこにかけて掃除するのだろうと思いました。まさか、ガラスに直接はしごはかけられないでしょう。

 結局は掃除などメンテナンス出来なくて、汚れたままになるのかもしれません。チェック・ポイント4(断熱は軽視しない)とチェック・ポイント5(明る過ぎる家は怖い)で書きましたので重複は避けますが、この妻壁一杯か半分位の窓は断熱効果も失われることでしょう。

 まとめますと、妻壁一杯か半分位のガラス窓は必要以上に明るすぎて、断熱効果のない、はしごもガラスに直接かけられずメンテナンスもしにくい、しかも地震の揺れに極めて弱いと言えます。施主の方はこのような事実から、ログハウスの「妻壁一杯のガラス窓の常識」を是非、今一度検討されたらいかがでしょうか。

(5)外材の方が安い?
 この項を書くに当たって、冒頭から申し上げておきたいのは「外材は悪い」とか「外資系の住宅メーカーは良くない」などの発想で書きはじめたのではないと言うことをご理解願います。丸太の材質についても、住宅メーカーについても、内・外の違いも含め、どれも一長一短あると言う前提に私はたっています。外材が、飛び抜けて長所ばかりなら、全国で丸太の質も住宅メーカーのシェアも席巻しているはずですが、現実は違います。

 今この原稿を書いている時点(98年7月現在)では以前ログハウスを見学していた頃に比べ、相当な円安です。外材の価格が変わるとしたらは円レートの高低も大きい原因でしょう。しかし、この「常識」みたいになっている「外材の方が安い」は本当にそうでしょうか。

 正直に申し上げますと、私もログハウスに興味持ち始めた頃はカナダ産のスプールス、レッドシーダー、ダグラスファー材で口径35〜40センチの丸太、しかもハンドカットのログハウスに憧れていました。しかし、いくら外材が安いと言う風潮があっても、このクラスになると結構高価でした。また、この大きい口径は住宅用なら少し圧迫感があるだろうなと思いました。それと乾燥した寒冷地に育った木が、高温多湿の日本(私の場合は長崎県大村市)に合うのだろうかと言う素朴な疑問もありました。あくまでも私の場合ですが、建築前及びその後のアフターサービスも検討し、できるだけ近い大分県の日田杉を選びました。

 住宅メーカーのチラシや宣伝物に嘘はないとは思いますが、「30坪で800万円」「坪単価で30万円台を実現」などと、ちょっと驚くような低価格の文字が大きく見出しに使われています。しかし、その近くには「標準セット価格」「モデルセットプラン」などの基準ならと言うただし書きみたいな小さな字も書いてあります。これらを見なければ「外材は安いな〜」となるでしょう。

 しかし、実際はこのモデル価格だけで、施主が望んでいる家作りが、100%できると考えるのは早計だと言えます。その具体例を上げていきます。
1、国内、特に、遠距離地にログを運ぶ運搬賃が入っているのか、どうか。
2、トレーラーから降ろす重機の費用が組み込まれているのか、どうか。
3、防腐加工を国内でするのか、どうか。
4、基礎や屋根材などの変更は可能か、どうか。
5、気象やその他の条件変更により、輸送や建設コストが当初見積もりより増えた場合、同じかどうか。
6、家の外部は標準設定だが、たとえば電気工事や照明器具などはオプション形式で、後でプラスしていく方式か、どうか。
7、極端な話し、大工さんや職人さんの手間賃は別途計算方式か、どうか。
8、アフターサービスも入っている価格か、どうか。
9、契約時点と正式発注時点や受け取り時点で、大きく円レートが変更になった場合にはどうなるのか。
10、構造部材によっては現場合わせと言う部所もあり、合えばいいが、万が一にも合わなかった場合、さらには、本数が不足した場合など、国内産と外材とではそのリカバリーの差は大きいもので、その時はどうするのか。各社によって「標準設定価格」の表現はマチマチで、家は建てられても、設備全部ではないので住める状態でない「標準価格」も中にはあるのです。しっかりチェックすべき事項です。

 結局、上記1から10まで色々足していったら、ほぼ、国内産と変わらなかったと言う例もあります。外材の方が安いと言う「常識」から一歩離れて、今一度別の角度で考えてもいいのではないでしょうか。 

 以上、(1)から(5)まで、書きましたが、まだまだ、異常とも言える位の大きくて広い空間を有する吹き抜けや普通住宅と同じように複数以上の大きい掃き出し窓を付けている家が、「明るくて、解放感があるログハウスだ」みたいな風潮で本にも書かれています。

 これでは、丸太(ログハウス)が本来持っている機能
1、断熱効果が高い(コンクリートの10数倍と言われている)
2、地震に強い
3、耐久性が長い(メンテナンスしだいでは100年は持つ)
4、湿度調整をする(雨の時には湿気を吸い、晴れの時には中から吐き出す)
5、ゆったりできる(森林浴気分になると言われている)
6、音響効果が良い
を最初から殺すことになりかねません。

 上記1から6までの丸太が本来持っている機能の効果を得ようとすれば、今「ログハウスの常識」みたいになっている次の事項
1、広くて明るすぎる窓
2、妻壁一杯や半分位の窓
3、広くて大きな吹き抜け
4、急角度でとんがった突き出し屋根
などを避けられることが、むしろ必要だと言えます。
 普通住宅よりも、あえてログハウスを建てようとされている施主は人一倍に木に対する思い入れが強いと言えます。その気持ちは私自身充分理解できます。

 だからこそ、折角のログハウスや木の本来の持つ機能を最初から生かさないようなプランニングなら、ログハウスを建てる意味がないでしょう。そうだったら、切られた木があまりにもかわいそうです。木は切られても生きています。乾燥期には割れる音がし、湿度調整を住む人にしてくれ、来客が長居されるようにゆったりした気分も味合わせてくれます。天然素材だから、塗装やメンテナンスに手間暇かかります。しかし、逆に家に愛着がわき、さらに木に対する思い入れが増すとも言えます。

 これからログハウスを検討してみようとする方々、今「ログハウスの常識」みたいになっている建て方を先入観抜きで考え直され、ログの機能を百%引きだすプランニングをされたらいかがでしょうか。

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