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探すのに苦労した有田焼の洗面器

 有田焼の洗面器はなかなかすっとは行きませんでした。まず、97年のゴールディンウィーク中に開催されていた有田陶器市に出かけることにしました。道路の両端は皆な陶器店と窯元と思えるくらい出店されていて、5キロほどテクテク歩いて、やっとその中から、最初の窯元を探し出しました。そこの社長さんから「洗面器はほとんどが注文形式です。私の方ではこのような物を衛生陶器と呼んでいるが、有田の多い窯元でも数軒しか焼いていないのでは。価格は相談に乗ります」と言うことでした。パンフレットの値段では洗面器だけで70万円、色も柄も申し分ないのですが、定価の半額位にしてもらっても、とても手が出ないな〜と思いながらこの窯元をあとにしました。

 それからさらに延々続く陶器市を歩き出しましたが、社長が言われた通り、洗面器や衛生陶器を展示している所はありません。仕方なしに、花を生けるような大きい鉢を飾ってある店で店員さんに聞くと「そのような物を焼いている窯元は少ない。あまり売れないですからね」との話しでした。それでも一店のパンフレットをもらい、さらっと見てみると、色柄それに形(12角)もいいのですが、やはり価格が合わないな〜と言う感じでした。

 なかばあきらめかけて、帰ろうとし上有田駅へ向かっていた時、道路脇に手洗い鉢含めかなりの大きい鉢を並べた露店がありました。しかし、洗面器はなく、駄目で元々と思い「洗面器は焼いてませんか?」と聞くと、以外にも「今はないけど、焼けますよ。ほかの窯元は高かったでしょう。値段はあなたの言い値でいいですよ。今忙しいから、陶器市終わったら来て下さい」と言われました。

 秋になり、そろそろ、丸太組みが近づき始めたので、先ほどの窯元に行くと、真ん丸の形しか焼けないと言う不満はありましたが、値段等はお互いにまとまりました。しかし、後日「直ぐに半金を入れてくれ」と言う連絡があり、なぜかな〜と思いながら、友人や義兄に相談すると「盛夫、辞めた方がいい」と明確に言われました。自分なりの意見はありましたが、ここで固執する必要はなく、直ぐにキャンセルの連絡を入れました。

 また、振り出しに戻り、市販されているイナックスか東陶の白一色の物でも仕方ないかなと思いはじめ、今度はどこにでもあると考え、地元の住宅メーカーや建材店を当たることにしました。ユニット形式はいくらでもありましたが、なかなか、私の希望している物はパンフレットで取り寄せになることを知りました。中には有名窯元による有田焼きもありましたが、肝心の値段が百万円を越していました。また、パンフレットを調べていると普通市販の白い洗面器も軽く10万円越す物もあり、さらに高い物もありました。その時、私は単体で購入しようと考えているから、この種の値段が分かるが、普通は住宅に当然付いているから分かりにくいんだな〜と思うようになりました。

 市販製品の値段を見て、結構するなら、もう一回あのパンフレットにあった有田の窯元に行ってみようと言う気になりました。9月19日、有田の市街地よりかなり離れた所にこの親和(絵夢)さんの窯元はありました。この日はあいにく、「北九州で展示会出展のため、社長やデザイナーはいない」と言うことでしたが、工場長さんに展示館や工場を見せてもらいました。パンフレットでは見ていましたが、実物の12角の洗面器は大きくていいな〜と、実感しました。「値段は次回社長と話しされたら」と言われたので再度行くことになりました。

 10月15日、この日は社長もデザイナーの方もおられ、かなりの値段折衝になりました。「洗面器、鏡、トイレ手洗い鉢をまとめて三つ買いますから」と言うと、定価の半額付近でまとまりました。ただし、焼くのには時間がかかる(大きいからうまく焼けたと思っても、排水パイプやオーバーフローラインにひびが入りやすいとのことで、焼き直しが数回必要なこともある)と言うことでした。

 日数がかかるのであれば、洗面器は展示会で出された白地にツタの緑や赤い実をあしらったのがいいのではとなり、後日引き取りの連絡をすることにしました。ツタ柄とは違いますがトイレ手洗い鉢(アザミの柄)も一緒に10月21日に引き取りました。「鏡は端にカットを入れた方がデザイン的にも高級感からも良い」との社長さんの指摘から、これは新たに焼いてもらうことになりました。鏡のデザインは洗面器と使用場所が同じなので、洗面器と同じツタ柄を依頼しました。

 後日、洗面器のサイズを計るため、棟梁さんにお見せすると「これは宝石みたいで弁償できる物ではないので、取り付けは一番最後のさいごにしますから」と言われました。待っていた鏡も出来上がり、12月15日、有田に引き取りに行きました。

 この有田については一つ別の話題がありました。打ち合わせや引き取りも含めて窯元に何回となく行ったので、その度に内装工事の休憩時間、大工さんと「ここの窯元のデザイナーの方はなかなかの美人で、今日もミニスカートだった」と報告しました。すると「あんたは、打ち合わせより、そっちの方を楽しみしているのでは」「何回も行っているのは下心あるのでは」などと冷やかされました。

 丸太自体が全部男性的・野性的に見えるので、たった一つでもおしゃれ心も出したいと思い、探しまわった洗面器と鏡です。毎日使う物ですから、日数かけて探しまわった甲斐があったな〜と思っています。(記:1998年3月)

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