今アルザスが面白い4、アルザス料理とお菓子
『今アルザスが面白い』の4回目は、アルザスの料理やお菓子についてです。その前に、日本でも世界各国の料理でも、名前はどこかで聞いたことがあるけど、食べたことも見たこともないというのがないでしょうか。また、名前それだけで想像するといいますか、何か期待するものがあるかとも思います。
私にとってその中の一つが、“フランス菓子”あるいは“フランス風洋菓子”という名前でした。また、お恥ずかしいことを書かざるを得ないのですが、私は(子どもの頃は別としても)元々「お菓子やケーキ類は、女や子供の食べるもので、大の男の大人が食べる物ではない」と言う馬鹿な考えの持ち主でした。
ですから、自ら買って食べたとかはあまりなく、旅先のお土産も、お菓子類は見向きもせずに山海の珍味の方でした。その考えが一変したのは、1986年2月ローマに行った時、現地の航空関係者に連れて行ってもらったレストランでメインの料理後、少し苦いコーヒーを飲みながらアイスクリームを一緒に食べました。「へー、食後にアイスクリームかあ」と思いながらも、「あー、こんな食べ方があり、こんなに美味しいのか」と、その時つくづく思ったものでした。
それからは、逆に「こんな美味しいものを女・子供だけに食べさせるのはもったいない」と思うようになりました。そのようなことから、お菓子類も少しは食べるようになりました。
その中で、特に、“フランス菓子”あるいは“フランス風洋菓子”という名前は、見たり聞いたりはしていましたが、中身のことはほとんど知りませんでした。今回行ったアルザス地方のお菓子類が、実は“フランス菓子”を代表していることなどは、さらに全く知識にありませんでした。
今回これらのことを書こうと思いましたが、この種の内容は先に述べたように不得意でしかも書くための資料が少ないので、羅列風かまとめ風に書いています。また、今回の旅行は、実質3日間でしたので食べた種類も少ないので、その他は聞いた範囲内でこのページに書き加えています。
アルザス料理やお菓子は、古くからその位置=ヨーロッパの十字路にふさわしく、多種多様な物があふれています。その中でも、特に、ドイツ風あるいはフランス風がお互いに交わり合って、さらにこの地方独特の味や食文化を作っているように思えました。なお、この味をより一層に発達させたのは、何と言ってもアルザスワインであることは言うまでもありません。
まずは、私が見たり、食べたり、聞いた範囲内で箇条書きに羅列してみます。(なお、下記の種類は、たくさんある中のほんの一例です)
アルザス料理とお菓子の一例
・タルトフランぺ(Tarte Flambee)
・ベックオフ(Baeckeoffe)
・フォアグラ(Foie Gras)
・アルザス風サラダ
・シュークルート(Choucroute )=ザワークラフト
・クグロフ(Kouglof)
・プレッツェル(brezel)
タルト・フランベは、見た目同じように見えても中に入れる具の種類によって、(普通の)アルザス風、シャンピニオン(マッシュルーム)風、グラタン風などありました。主な具材は、玉ねぎ、ベーコン、きのこ、ソーセージなどです。薄い四角のパン生地の上に生クリーム、フロマージュブラン、それに上記の具を混ぜ、石釜で焼き、その後木の板に乗せて出されました。
タルト・フランベを薄焼きピザとかお好み焼きなどみたいに言われますが、私は、この横40cm、縦30cmくらいの木の板に乗っている見た目の印象と、使われているチーズの関係からか、何かこれらとは別物みたいなものに思えました。また、このタルト・フランベは白ワインもいいですが、ビールに合うと思いました。
ベックオフは、各家庭や各ビストロで鍋の中に入れる具は様々ですが、鶏・牛・豚などの肉類、ジャガイモや玉ねぎなどの野菜などをアルザスワインをたっぷり入れて煮込んだものです。(古来の料理法は、肉類をワインに一晩ねせて、その後野菜類を加え、土鍋で3時間くらい蒸すそうです)
アルザス地域は寒冷地ですから、この地でとれる食材ばかりで、土鍋で湯気が出ている食べ物は好まれるだろうなあと思いました。これに合うワインは、当然、肉類と相性のいいゲヴルツトラミネールなどでしょう。
フォアグラは、ガチョウの肝で トリュフ、キャビアと並んで「世界の三大珍味」と呼ばれ、フランス高級食材のひとつです。 私は名前くらいは知っていましたが、これがアルザス地方特産の食材で、郷土料理とまでは知りませんでした。今回機会なくて食べれませんでしたが、『フォアグラのパイ包み焼き』などが評判のようですから、次の旅行の楽しみにしておきたいと思います。
アルザス風サラダは、この旅行で何回か食べました。「今日の定食」となっていたサラダ定食は、肉を小さく四角形に切って焼いたのを冷やし、色々な野菜と混ぜ、その皿にほんの少し麺類を盛り付けたものでした。何を、どれをもって、“アルザス風”と言うのか、その定義を私は理解できていないのですが。
このように料理の名前の頭に“アルザス風”とか“○○○風”と付ければ、肉料理であろうが、魚・麺類など全ての料理がそうなってしまうのかなあとも思いました。まあ、トマトを使って料理すれば何でも“プロヴァンス風“みたいに呼称しているレストランも日本にありましたので、あまり難いこと言わずに先に進むことにします。
シュークルート(独語:ザワークラフト)は、この地方の名物でキャベツの酢漬けみたいなものとか。樽に千切りしたキャベツを粗塩や好みの調味で何週間も漬け、その後そのまま生で食べても美味しいとのことでした。また、このシュークルートと鶏肉、ジャガイモ、ワインなどと一緒に数時間蒸したら寒い日などは、より一層美味しいと言うことでした。なお、この料理に合うのはやや味が濃いビールがいいのではないでしょうか。私は、今度行ったらドイツ風ビールのあてに、このシュークルートを食べてみたいと思っています。
クグロフは、このページ左側に掲載している写真です。(ピンボケですみません)見た目”王冠型のパン”は、アルザス地方のパン屋さんやカフェで良く見ました。また、カテドラル広場などのお土産屋さんには、このパンを焼くための素焼きの鋳物が売られていました。
このクグロフの起源はかなり古いようですが、フランス中に有名にしたのがマリー・アントワネットで、母国オーストラリアから嫁ぐ時、好物のクグロフを紹介したそうです。
私は、この旅行に来るまで全くこのクグロフは知りませんでしたが、ブラックコーヒー飲みながらの朝食は、普通のパンよりはその王冠型の形状も手伝い、ちょっとだけ贅沢な味でした。私は元々が米さえあればパンは要らないという和食党ですが、このクグロフはいいと思いました。
プレッツェルは、どこのパン屋さんでも良く見ました。八の字を横にしたようなパンは、小麦粉、油、塩、水などでつくられた安価なパンだそうです。まあ、いつでもどこでも手に入るパンなのでしょう。実際、私たちが朝食をとったカフェのケースに、このパンはたくさんありました。
以上が私の見聞きしたアルザス料理やお菓子です。これ以外にも、本などには、お菓子のパンデビス、チーズのマンステールなど、たくさん書いてありました。私は改めて、このアルザス地方の郷土食は、食材から料理、お菓子に至るまで、本当に豊富なんだなあとつくづく感心いたしました。
郷土食の豊富な所は、ただ単に食文化が優れていると言うだけでなく、芸術や文化面さらには人間性そのものも豊かな地域だと思います。そうでないと、これだけの多種多様な郷土食の伝統は続かないでしょう。このことは日本でも同様で、食は人と地域そのもののベースのような気がします。(掲載日:2004年9月16日)