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聞いた言葉・第135回目、デジタル時代に、ますます重要なアナログ作業

デジタル時代に、ますます重要なアナログ作業

 今回の言葉は、デジタル時代に、アナログ作業の重要性を強調しているので一見矛盾しているように見えます。実は、 この言葉、例えばデジタルカメラが一般化し始めた1990年代中期頃からパソコン雑誌その他で同種の表現を見た覚えがあります。見出しですから短く書いていますが、うろ覚えながら「仕事や生活用上で、さらに今後デジタル化時代になっていくが、逆に従来通りのアナログ作業は、 ますます、その重要度を高めていく」みたいに書いてあったと思います。

  ここで、国語辞典の大辞泉に、先の二つの言葉の解説として次の<>内のことが書いてあります。<アナログ(analog)=数値を、長さ・回転角・電流などの連続的に変化する物理量で示すこと> 、<デジタル(digital)=連続的な量を、段階的に区切って数字で表すこと。計器の測定値やコンピューターの計算結果を、数字で表示すること。数字表示>  

アナログ一眼レフカメラ、ASAHI PENTAX 6×7
(1978年9月22日購入。詳細ページは、ここから)

デジタル一眼レフカメラ、Nikon D200
(2005年12月29日購入。詳細ページは、ここから)

アサガオ(朝顔)

 確かに、現代はパソコン、デジタル時計、デジタルカメラ、地上デジタル放送、オーディオ機器などを始めに、身の周りでも仕事場でも、 あるいは交通気機関、買い物その他の外出先でも自ら意識して見るかみないかは別として、多くの場所や使う物でデジタル化が進んでいたり、デジタルの用語を使った表現がしてあります。 これらだけでも、まるでデジタル全盛時代みたいな感じもします。

 さらには、映画、テレビ、新聞、書籍類に至っては、私が知らないだけで中身などの作成時には、ほとんどの分野でデジタル作業が進んでいるのでしょう。 ただし、そのようなことを知りつつパソコン雑誌や週刊誌などで、ずっと以前から専門家の方々が「デジタル時代には、ますますアナログ作業が重要だ、不可欠だ」と、なぜ言われたのでしょうか。まるで、時代が逆行したみたいにも聞こえました。

 このことで、下手な横好き素人カメラマンの私としては、分かりやすい例として一眼レフのデジタルカメラで説明したいと思います。人によっては、この説明に異論があるかもしれませんが、デジタルカメラは、人の目で見た、撮った画像を変換、記憶するのはデジタル技術です。写真加工も初級レベルなら比較的容易に出来ますし、また保存も長期にできます。 ただし、被写体に合うレンズ交換や撮る行為そのものは、人の作業=アナログ作業です。

 つまり、撮りたい場面に合うレンズへ交換し、シャッターチャンスも人が自分の意思でボタンを押さないかぎり写真は撮れません。デジタルカメラだからと言って最も良いレンズで、最高にいいタイミングにカメラ自らボタンを押して撮ってくれる訳では当然ありません。ですから、写真愛好グループがバスツアーなどで同じ場所の例えば滝とか渓谷美とかを撮ったとして、 場面は似ていても出来上がりが全く違う場合があります。

 それは、なぜか? 一人ひとりの個性が違うからだと思います。同じグループ全員で、同じ滝を撮ったと言う同種の写真でも、中には太陽光線や周りの風景の構図などを考えて撮った結果、コンクールで金賞に輝く人もいれば、残念ながら入選漏れの方もいます。念のため、コンクールなどの場合、審査する側の意思も大いに働くので単に作品の良し悪しだけでは当然ないとは思いますが。

 いずれにしても、いくらデジタル機器だと言っても完全フルオートマチックの誰が操作しても同じ結果になるような場合を除き、どこかで人の手が入る場合は、アナログ作業の必要性と、その作業の良否は大きな開きになっていると思われます。あと、インターネット時代といっても、そこに表示されている写真、イラスト、原稿など元は、人が一つひとつ手作業で作成したものばかりとも言えます。

 中には「いや、私はホームページ上にある文章、資料、写真などのデータから全原稿を作成したから完全デジタル作業だ」と言われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その引用・参照された元データは、必ず誰かが調査し人の手によって作成されたものですから厳密に言えば、その元々のデータが存在しなければ原稿も書けなかったと思います。このように一見全てデジタル作業に見える分野でも結局は、様々な形で人自らの手足を使った諸活動、つまりアナログ作業がベースになっていると思われます。

 私は、聞いた言葉シリーズ第47回目『最後はレンズ勝負ですよにもデジタルカメラやレンズついて書いています。極簡単に紹介しますと例えデジタル一眼レフカメラでも、結局はレンズより後ろ側(ボディー側)のCCDや記録装置などの電子機器が、どのメーカーでも同水準なら、アナログそのものであるレンズの良否がそのまま写真の出来上がりを決めると言うことです。これは何もカメラの世界だけでなく例えば絵、イラスト、デザイン、文書、映像(動画)に至るまで作業の多くはデジタル加工であっても原版、素材や生データそのもの(アナログ)が、優れていなければ完成度まで影響されると言うことではないでしょうか。

 ここで話しは変わりますが、私の「ログハウスこぼれ話し」シリーズの12月ページに「月への美意識とのタイトルで、平安時代の美意識について、次の<>内のことを書いています。<現代人や西洋人は、月の満ち欠けで最も美しいと思って見るのは満月だ。しかし、平安貴族や万葉歌人は、満月よりも三日月みたいに欠けている部分も想像して、もしも、満ちていたら、こんなに綺麗だろうなあと言う想像の美も含めて楽しんでいた」と。 つまり、その時その場で見ただけで判断した美しさでは、本当に美しいと思う域に達していない、想像も働かせて見た美しさが本当の美の感性だと。>

 つまり、人の感性は、その場で見たままの(デジタル的な)美しさだけではなく、中には人間として本来持っているイマジネーション(想像、想像力)含めて頭の中では美を表現していると言うことです。あと、江戸時代に流行った浮世絵(版画)なども、ある種簡潔な彩色でシンプルな構図ながら、その絵から想像して見ていると物語が一つ出来そうなくらいの表現力があると言われています。また、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ゴッホ、ミレー、ルノアールなどが描いた”世界の宝”とも言われている絵画なども、そうではないでしょうか。

 現在の書籍類、絵、イラスト、デザイン、写真、映像など、さらにはそれらを活用する映画、テレビ、新聞やホームページ類に至るまで途中や完成時のデジタル作業は、さらに進化しても肝心要(かんじんかなめ)の素材、原版、生資料、生写真などは、人の手によるアナログ作業を用いなければ制作できないと言うことでしょう。ましてや独創性、オリジナル性などが求められる=人に見て頂くもの(作品、商品など)は、特に、最初のアナログ作業でできた素材が決定的な流れを作るような気がします。

私の関係ホームページ
 最後はレンズ勝負ですよ
 月への美意識
 炎の画家ゴッホ
 孤高の美しさ マッターホルン
 音に深みがある
 私のカメラ紹介

 また、日々の新聞、ラジオ、雑誌類の報道や記事でも、その現場・取材先に出向いて調査、収録、映像化しないと独りで機器が勝手に作れるものではないと思います。その意味でも、ますます調査力・取材力のある人=アナログ作業に強い人が、求められる時代のような気がします。さらに申し上げれば、このような方々が本当に力量発揮されるような社会風潮あるいは会社なら社風にならない限り、本物の報道や映像とも言えないのではないでしょうか。

 また、繰り返しになりますが、素材、原版、生資料、生写真などは、人の手を煩わして作る以上、手間暇もかかりますし、さらに独創性・オリジナル性などは、本人の才能も日々の努力も必要と思われます。しかし、そこから立ちあがり出来上がった作品は、多くの方の評価も得られるものだとも言えます。今回の言葉、デジタル時代に、ますます重要なアナログ作業は、ずっと以前から言われていたことですが、その意味が将来も高まり、続くのではないでしょうか。

(記:2011年8月29日)
  

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