高木さんのイタリア遊学記
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滞在証明書(Permesso di soggiorno)
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3ケ月以上、滞在する外国人は到着後8日以内に管轄の警察署に申請しなければならない。私は4日目に行くことにし、前日、下見を実施した。周辺の地理はもとより、申請の窓口も確認したかったからだ。 フィレンツェの中央警察署はフィレンツェの駅から東の方向に歩いて約12〜15分ぐらい。Via Santa Reparataの終点ぐらいの所にあり、中世の重厚な石造りのままで装飾と彫刻が美しい。 しかし、街全体が全てこのような建物ばかりなので特に目立ってはいない。辺りを見回すとパトカーは1台もいないし、警官の出入りも見掛けない。「本当にここが警察署だろうか?」少し、不安になってきた。通りがかりの人に聞いて間違いないことを確認する。 入場 玄関は閉まっていたので通用口らしきドアを確認する。人の出入りが見えたので行って見た。署の交代勤務らしき婦人がセキリティーカードを差し込み、中へ入ろうとしていたので急いで後について一緒に入る。中に入って見て驚いた。左側が警備室らしく、警官が6人、警備用のモニターTVを監視していた。12台はあったと思う。外からは全然想像も出来なかったこの光景に驚いてしまった。「へぇ〜、以外と最新の設備もあるんだあ!」と感心する。 警備室 テレビでマークされていたのだろうか?すぐに2人の警官が来た。「出て行きなさい」と言っている。イタリア語はわからなかったがジェスチャーで大体、理解出来る。しかし、このまま帰ったら下見に来たかいがない。書類を見せて「滞在証明書のことで来た。私は日本人でイタリアに勉強をしに来た。 イタリアが好きだ」と覚えたてのイタリア語でしゃべった。相手の警官は両手を上げ、「ノー、ノー」と譲らない。私も必死だったので何回も繰り返した。そして、とうとう、彼らは日本人の私に道を開けてくれた。「どうしようもないぜ。この日本人は」と例の両手を上げるポーズであきらめたようだ。1人が後ろを見て、奥にいるあの若い警官に聞けと指差してくれた。
親切
2列に分かれて受付をしているので進むのが速い。受付のイタリア女性は慣れているのか動作に無駄がない。1人当たり3分も掛かっていない。信じられない光景だ。 中国人の彼女も自分の番が迫っているので一生懸命に書いている。私も書いているが全然さばけない。とうとう彼女の番になった。いろいろ聞かれたり、添付書類をチェックされている。「印紙がない」(申請時11ユーロ必要)と窓口の女性から言われている。 彼女は「いやあるはずだからよく見て」と行っているようだ。しかし、ない。彼女は「そんなはずはない」と言うような顔をしている。一部始終を見ていた後ろの私は、気の毒になってカウンターの下あたりを探すと、小さな印紙が落ちていた。「これだあ」とすぐに拾って彼女に渡す。 彼女はびっくりして、「あぁ〜良かった」と真っ赤な顔をして、心から喜んでくれた。私は彼女に先程の恩返しが出来て、自分ことのようにうれしかったことを覚えている。 彼女の申請も問題なく終わり、帰り支度をしていた時、私は日本から持って来ていた浮世絵の絵はがきを記念に1枚あげた。彼女はそれを見て嬉しそうに帰って行った。彼女との出会いはこれっきりで、もう会うことなかったが、今ではフィレンツェで過ごした忘れられない思い出の1つになっている。彼女には心から感謝をしている。 幸運 とうとう私の番になり、日本から持って来た申請書一式を提出した。申請書はホームステイ先の住所と世帯の責任者を書くようになっている。わからなかったので入学している語学学校にした。間違いを指摘されると返答に困ることは確かだ。しかし、どうしようもない。知らないのだから。 あと、2〜3項目無記入の所があったが間に合わなかった。当然、書類不備で再提出になるかも知れないと覚悟はしていた。しかし、何事もなく書類は通過し、後日受取の半券をくれるではないか。「えっ、これで良かったの」信じられない。警察署に到着してからの所要時間はかれこれ1時間位だったと思う。 どうしてこんなに速かったのだろう?「聞いていた話とはだいぶちがうなあ!」私はうれしくなり、ルンルン気分で中央警察署を出た。前日の警察官、今日の中国人の女性。日本人の留学生。私がフィレンツェで最初に受けた親切だった。 |
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掲載日:2006年7月21日 |