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福田さんの写真館

平和な日本で夢をみる〜私の中東・パレスチナ (その3)
コーヒーショップの台所にて
アルバイト先が戦場ー(1)
 ヨルダン川西岸の中央に位置するナブルスは、ガザ地区についでイスラエル軍との衝突が頻繁に起きており、自爆攻撃の大半はここで計画されているという。

 僕はナブルスへ入る検問所を軍事作戦中との理由で通過できず、山越えで町へ入ることにした。市街まで一五分ほどの距離をタクシーと徒歩で約四時間。

 金と時間を要するルートである。検問所を通過できなかった住民もまた同じルートを行くことになる。自治区内の随所に設置された検問所は自爆テロ犯の検挙が理由。

 だが移動を制限されたパレスチナ人の生活をさらに圧迫し、イスラエルに対する憎悪がうまれている。自爆攻撃を誘発しているかのようにも見えてくる。

 周囲を山に囲まれたナブルスの風景は、長崎市街のそれとそっくりである。違うのは一〇〇万ドルの夜景に酔うではなく、町を囲むイスラエル軍基地が不気味に沈黙することだ。

 旧市街に安宿をとり、そこからタクシーで一〇分ほど離れたバラタ難民キャンプへ通うことにした。キャンプと言ってもテントの生活は昔のことで、今では狭い土地にブロックの家が密集して建っている。

 そこへ通うこと数日、行きつけになったコーヒーショップでアルバイトをすることになった。余りにも汚い店を掃除したのがきっかけだ。アルバイトと言っても給料が支払われる訳もなく、好きなコーヒーが好きなだけ飲めるただそれだけである。

 仕事内容は地べたの砂を掃くこと、コップを洗うことくらい。後にコーヒーを入れられるようになってからは、店の鍵を預かり早朝から一人で店番することにもなった。アラビックコーヒー一杯一シェケル(約二五円)、シャイ(紅茶)も同額で、エルサレムの相場と較べると三分の一の値段で飲めることになる。それだけ難民キャンプに暮らす人々の収入が低いことがわかる。

(掲載日:2005年11月5日、文責:福田雅宏さん)


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