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22)工具その1  アメリカ、プロート社、スナップオン社

何十年たっても変わらぬ品質


proto01.jpg (32923 バイト)  私は、1972年3月に高校を卒業し、初就職しました。その仕事場は、飛行機の客席、内装、照明器具、乗員用の椅子や非常用装備品を保守、点検整備する作業でした。会社からは、スパナ、ドライバー、アーレンレンチ(6角棒レンチ)、ラジオペンチ、モンキーレンチなど、個人用で使う工具を一式貸与されました。(工具類は、全て日本製品でした)

 この個人貸与品とは、別に格納庫内には工具室と言って、所属と名前さえ書けばどんな工具さえも借りられる窓口がありました。この工具室の工具は、特殊工具を除けば、そのほとんどが、アメリカのプロート社とスナップオン社の工具でした。

 あえて日本製品の名誉のために書きますが、現在は品質も操作性も良くなっていると思います。しかし、当時貸与された日本製の工具類は、例えば長年使用すれば、塗装が剥げたり、スパナの口が広がったりしていました。

 その点、プロート社とスナップオン社の工具類は、10年使おうが20年使おうが、その品質に変わりないものでした。とりわけ、ボルトの頭部にグイッと食い込みピッタリとらえるソケットの感触は気分まで良かったです。それに人間の手から出す油分や塩分は相当なものですが、相当期間使用しなくても、錆一つ浮かず完成度の高い物でした。

 また、正12角の菊型ソケット、メガネタイプのラチェットなどは、飛行機内の狭い場所で整備する時なくてはならない物で、どうしても欲しい工具でした。ただ、1個のソケットで5千円とか8千円、工具によっては数万円するのもあり、20歳前後で買える値段ではありませんでした。snap-on01.jpg (96661 バイト)

 それでも、必要性と便利さから、人事異動で要らなくなった先輩からもらったり、あるいは年に数個ずつ購入したりで、このプロート社とスナップオン社の工具類は、徐々に増えていきました。

 アメリカの工具サイズは、全てインチでした。1インチ=2.65センチですが、最初の内は頭の中で換算していました。しかし、慣れてくると、ボルトのヘッドを見ただけで、大体何インチのサイズに合う工具が必要なのか分ってきました。

 少し話しは脱線しますが、アメリカと言う国は、こと航空に関して、わがままもいいところだと、思っています。世界国中、長さの単位はミリ、体積は立方メートルなのに、いまだに、インチとガロンです。現有機種は作ってしまった以上やむを得ませんが、せめて新造機からは国際基準に従った表示ができないのか、現役のとき思っていました。(貿易問題でアメリカは、日本に対し「非関税障壁」とか「日本の基準はおかしい」などと言うのに、自分は国際基準をどう思っているのか、よく言うよと当時思っていました)

 今はもう、航空の仕事は退職して、ほとんど使うこともないこの2社の工具類ですが、たまに油さえさしておけば、何十年たとうが、新品同様の工具と言えます。(記:2001年6月29日)

(左上写真:プロート社の工具、右下写真:スナップオン社の工具)

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