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聞いた言葉・第18回目、逃げ道を作ってあげる

逃げ道を作ってあげる

 この言葉は、私の大阪時代の会社の先輩から聞きました。私が社会人になって年数たたない頃、ある(仕事場の)上司が以前の約束を違えて、「これで決定した」みたいなことなりました。「それでは、皆との約束と違う。元に戻すべきだ」と、けっこうな議論になり、日数もたっていきました。

 その時、先の先輩が言うには、「いくら自分たちが正しくて絶対間違いなくても、こと折衝ごと交渉ごとには相手の側にも様々な条件や立場があるから、”逃げ道を作ってあげて”話した方が解決が早い場合がある」と。この時期私は、若さゆえか、先輩の言うことには、なんか「妥協」みたいに聞こえて全く理解せず、むしろ理詰めで迫っていくみたいな態度でした。

 かなりの年月たってから、この言葉の意味が、段々と分ってきました。人は、生活していると好むと好まざるとにかかわらず、色々な場面で折衝ごと、交渉ごとに出くわします。また、色々な契約や商品などについてのクレームなども含め、日常大なり小なりあります。

 この時は、当然”相手”(会社や何かの組織などの代表をしている時は、”相手組織”)があり、話しは進んでいきます。(ただし、今回のこのテーマの話しとして、お互いに協議し同意後、書面で交わした規格や金額条項などではありません。また、意図的な詐欺などは論外です)

 ごく普通の常識人なら、お互いに話して交わした約束は守る努力もするし、出来なければできない理由を先に相手に述べて理解してもらおうと努力するものです。

 それでも、世の中には、様々な状況の変化もあり、先に述べた例みたいなこともあります。
このような時(100%回復は承知の上でも)、 どの当りで「妥協点」(あるいは、「納得いく水準」)を目指していくか、なかなか難しいところです。

 しかし、相手との今後の付き合いも考慮した方が、将来結果として得策の場合も多いと思います。

また、「言われた側」も、持ち帰って考える時、”逃げ道”に沿った形での検討、あるいは(販売会社なら、上司と相談する時、「この当りなら、お客さんも納得されるのですが」みたいな)解決策が見つけやすいものともいえます。

 「逃げ道を作ってあげる」の「あげる」は、こちら側にあるのですから、事柄によってはけっこう幅広く、余裕持って考えられることもあるかもしれません。逆に、相手の側は、「こちらの無理をきいてもらったので、別の面で何とかしたい」とか、「今は、これ以上できないけど、後で何か対応しなければ」みたいなことを考えるかもしれません。


 また、この言葉と同意語ではありませんが似た雰囲気の「ほめつつ、注意する」みたいな言葉も、以前聞いたことがあります。たとえ相手が悪かったとしても、最初からガミガミ言うよりは、何か一つでも相手(人柄や商品の長所などの場合もあるでしょう)のいい所を話しつつ、自分のいいたいことを言う方がいいのではと思います。

 そうすれば、怒られる側も「この人は今は怒っているけど、ちゃんと公平に見る目があるんやなあ」と評価するかもしれません。また、最初から最後まで”ガミガミ”調なら、その時は解決をみたとしても、言われた側には「なんで、あそこまで言われるねん」と言う新たな反発も残ります。

 次の場面で、逆に無理をきいてくれと言っても、そうしてくれないのはこれまたごく普通の言われた側の人情とも言えるのではないでしょうか。事柄しだいでは、損得ばかりでは考えられませんが、最初から最後まで”ガミガミ”調の方が損しているような気がします。

 このページは、「言われた側」に圧倒的に多かった私が、実体験とある種の感慨を持って書いていますので、それなりに、正確だろうと思っています。(念のため、今も私は「言われた側」が多いです) 

 また、この「
逃げ道を作ってあげる」は、親子間、夫婦間、男女間などにも、何かの場面において、合い通じるものがあるような気がします。(記:2002年11月21日)
 

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