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聞いた言葉・第99回目、『築100年、200年は新しい建物』

 

築100年、200年は新しい建物

コロッセオ
サン・ピエトロ寺院
ロンドン塔

 この言葉は、私が1986年にヨーロッパに行った時(この時の旅行記は、ここからご覧下さい)、同行の通訳の方から聞きました。パリ、ローマ、ロンドンの空港での会議や調査が終了すれば時間調整その他で 市内の見学もしました。見るもの全てが始めてと言うことも手伝い、また、日本ではそう多くない石造りが多いということもあり、旅先での建物は今なお良く覚えています。

 例えばパリならばルーブル美術館、ノートルダム寺院などは数回行きましたので古さだけでなく風格さえも感じました。ローマなら、それこそ2000年前から建っているコロッセオ、パンテオン、フォルトゥーナの神殿、さらには建築に約150年間かけて1626年に完成したサン・ピエトロ寺院を始め街の至る所でローマ建築の真髄の一端を見た思いがしました。(詳細は『驚異のローマ建築』ページをご覧下さい)

 ロンドンは、「街全体が博物館」と称されているように、見る建物全てが歴史的建造物かと勘違いするほどでした。特に、見学に行ったロンドン塔や国会議事堂など建物は歴史だけでなく、まわりの風景に溶け込んだような一体然としたものを見ました。

 そのような建物ばかり見ていたので、私は通訳の方に「あのう、こちらの建物の耐用年数みたいなものはあるのですか?」と間抜けな質問をすると、「専門家ではないから分からない。でも、こちら(ヨーロッパ)では、築100年、200年は新しい建物だよ。300年、400年でそこそこかなあ。石自体(石材)がいい物で出来ているのは汚れなどを洗浄するだけで、また新しくなるよ」と返事されました。

 そう言えば丁度ロンドン滞在中、国会議事堂が部分的に外壁の洗浄中で、そこだけは白く見え、そうでないところ(汚れた)黒っぽい色との対比を思い出していました。なるほど、石材しだいでは築年数は全く関係なく、メンテナンスなどをキッチリやっていれば何百年でも、あるいは何千年でも使っていけるのだと思いました。

 それに比べ、詳細分かっていませんが日本の鉄筋コンクリートの建物などは、どうなっているのでしょうか。たまにテレビニュースなどで、まだ50年あるいは60年経っていないのに「戦後直に建てられた・・・・は、壊して建て替えられ3年後に新規オープン予定」などを聞く場合があります。民間のビルだけでなく、公共の建物含めて、そうではないでしょうか。

  あと、日本は木造建築が多いから、この仕様で建てられた建築物は耐用年数は短いと言う意見もあるかもしれません。そうかなあと思いますが、法隆寺の五重塔は世界最古の木造建築とも言われ千年以上でしょう。また、築千年は特別としても、ここ数十年前からか静かな古民家ブームみたいなものがあります。50年、100年、数百年前の木造の家がそのまま売られたり、あるいは黒光りした梁や柱がリサイクルされてもいます。

 私は自分の田舎で40年ほど前に何回か見ましたが、農家などではたとえ古い柱や瓦でも使えるものなら、改築しても使っていくというのが極自然の建て方でした。確かに石に比べたら長くは保てないかもしれませんが、それでも「木造だから総て耐用年数が短い。数十年で建て替えは当たり前」と言うのは、それは何か違うような気がします。

  「地球資源を大切に!」とか「リサイクルできるものはリサイクルを!」みたいな標語を見たり聞いたりして久しいですが、昔の人はそのようなことは聞かなくても、ちゃんとしておられたのだと思います。また、小樽運河沿いなどには明治時代からの洋風煉瓦造りの建物が立ち並び見事な景観でした。

私の関係ホームページ
海外旅行記 大もくじ
ヨーロッパ3空港調査旅行記
驚異のローマ建築

 高温多湿の日本では建物の耐用年数は短いと思われますが、ようは木造住宅でも鉄筋コンクリートなどの洋風建築でも設計しだい、あるいはその後のメンテナンスをどうするかが問題ではないでしょうか。。あと、人間の寿命は長くても百年くらいでしょうから、どうしても時間の単位が50年でも長く古く感じますが、はたして建物までも一緒に考えていいものでしょうか。

 ヨーロッパ旅行時に「築100年、200年は新しい建物」と聞いた時、建築物の話ではあったのですが、それとは別に私は歴史観そのものの時間単位が長い、逆に日本ではあまりにも短く考えているような気もしました。

(記:2008年5月22日)

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