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忍耐の寿司屋

 どこの寿司屋も同じと思ったが、以前新聞で、ある作家が「小樽の寿司屋はどこも高い」と書いてあったのを思い出したので、地元の人に聞いてみたかった。魚屋さんの紹介ならマアマアだろうと思い、また、戻るように運河近くにある『政すし』に行った。

 2階にあり、新しい白木の内装で美人のおかみさんもいて、期待をした。13時30分近くにもかかわらずお客さんは多かった。盛り合わせを待ちつつ煮物の付だしをあてにビールを飲んだ。ゆっくりと今までまわった所を地図で確認し、さらにもらったパンフレットを全部見終わってもまだ寿司は来ない。次の所に行く時間も気になりはじめた。

 板前は隣の客と話すばかりでこちらの様子は無視している。オーバーに言えば過去寿司を食べた経験上最長の待ち時間になり、椅子にかけたコートを持ち席を立とうとした。その時おかみさんの目と会い、「電車の時間がありますので」と言うと、「すみません。直ぐ持って来ますからかけて下さい」との返事と併せて板前が「直ぐ出しますから」との掛け声もあった。

 こんな時は味も何もなかった。私は帰り際にいつも食べ物屋では「おごちそうさん、ありがとう」と言うことにしているが、今回は怒らない変わりに何もあえて言わないことにした。おかみさんも会計しながら気になったとみえ「すみませんでしたね」と言われた。

 値段はマアマアであったが無言の会釈で外へ出た。待つこと30分、食べること5分の寿司屋であった。一人で食べ物屋に行った時は人数優先でよく待たされることがあり、いつもそんなに気にはしなかった。しかし、こんな寿司屋は多分大阪ではないと思うし、普通なら客と店員よりも店員同志で問題になるのではと思った。

 私の旅先での楽しみはその地方の美味しい食べ物、はじめて見る名所旧蹟、見知らぬ人との楽しい会話、特徴あるお土産、ゆったりした宿泊先(温泉)である。ただ、この総てが揃うと最初から思っていない。しかし、このような寿司屋は一人客が気分悪くして帰ったとほんのチョッピリ位は思ったかもしれないが、私の後の見学予定が台なしなったことは全く考えていないだろう。値段以前のことである。

 小樽の寿司屋の件で新聞に書いてあったことはただ単に値段が高いだけのことでなく、このようなことも含めての経験をしたからだと思った。小樽の寿司屋総て新聞通りとは私も決して思わないし、中にはいい所あると思う。小樽自体はあと何回も行きたい所なので、このような評判が定着しないこと望んでいる。これ以上書くと「子供じみている」「食い物の恨みは・・・」と言うことになるので次に移りたい。

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