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第4日目 93年10月18日(月)

アイガー直下の登山鉄道

 06時過ぎには起きて洗面した。ベランダに出ると星空もまだ残ったアイガーが立っていた。30分後に朝食時間となりアメリカンスタイルのバイキングだった。

 バイキング式と言っても日本のホテルようにジャムやバター以外に焼魚、佃煮、かまぼこ、漬物、サラダ等種類がある訳でなく、せいぜい乳製品、ジャム、スクッランブルエッグそれに缶詰のみかん位であった。特に野菜が欲しかった。

 07時にはロビーに集合して、ホテルマンに小林さんのバッグが届けられていないか尋ねられると「まだだ」との返事だった。再度頼んで駅に行くことにした。外に出ると夜も明けて写真も撮れるようになったのでアイガー北壁をバックにシャッターをお互いに押した。

 ヴァンゲルアルプ(WAB)鉄道の予約席にはドイツ語で「インケン」と書いてあり、一同大爆笑となった。車内は人が座れる最小限度の大きさで可愛らしい感じもした。定刻の07時18分にグリンデルワルト駅(1034m)を出発し、最初はアプト式のギヤで降りて行った。

 10分後にはグルント駅(943m)に着いた。ここはスイッチバック式の駅でバックするような方向で今度は右へ登って行った。まわりはのどかな牧場でスイスらしい絵になる所ばかりだった。寒いが窓を開け、アイガー北壁等を写真を撮った。中間駅のアルピグレン駅(1616m)は少しの待機で直ぐ登って行った。このまわりはハイカーが思いおもいのかっこうでゆっくり歩いていた。

 07時54分、峠の中継基地クライネ・シャイデック駅(2061m)に到着した。ここから仰ぎ見るアイガー、メンヒ、ユングフラウの3名山が絵葉書やパンフレット紹介になる位の絶好のポイントだった。あいにく乗り換え時間が少ないため帰りに写真を撮ることにした。

 ヴァンゲルアルプ(WAB)鉄道からユングフラウ(JB)鉄道に乗り換え、登山電車は08時02分クライネ・シャイデック駅を出発した。あまり時間がかからず最初のアイガー・グレッチャー駅(2320m)に停車し、そこにはレストランがあった。後方の下界は雲がたなびいていて巨大な温泉の煙のように見えた。

電車はかなりの角度を登り始め、しばらくするとアイガー・ヴァント(アイガー北壁)駅(2865m)に着いた。ここはアイガー北壁をくり抜いた展望台駅で 5分間の停車時間を利用して北壁を見ることにした。

ガラス窓からは残念ながら雪と曇りのため外は見えなかった。ここの壁には日本語でも「アイガー北壁征服の記録」がポスターサイズで掲げられていた。日本の登山隊も北壁直登ルートと言う難しいコースで成功していた。

 壁が急角度過ぎてここだけは雪も付かないような難所で良く登れたものだと感心した。次はアイスメーア駅(3160m)、アイスメーアとは「氷の海」と言う意味。名前の通り展望台からはまさしく氷河と雪の世界だった。

5分間の停車時間はあっと言う間に過ぎ乗り遅れたら寒いし大変なので時間が気になった。さらに登る時5ヶ国(英、仏、独、伊、日本語)で車内案内があった。それによると次の終点駅は「トップ・オブ・ヨーロッパ」と言って鉄道駅ではヨーロッパ最高所であった。(1994年1月1日記す)


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