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第8日目10月23日(土)

スラれそうになった

 06時過ぎに入浴した後、今日の昼はどこに行こうかと思いガイドブックに目を通した。07時30分パリ最初の朝食だったが、缶詰のオレンジ等がっかりさせる物だった。今まで三つ星はパリ、ローマ、ロンドン、ジュネーブ、グリンデルワルトと泊まり、今回パリは四つ星ホテルだがロンドンを除き朝食自体はあまり代わり映えしなかった。

 当然のことながらホテルの等級はあくまでも施設、設備面であってレストランの味の善し悪しではなかった。味まで考えたのが間違いだった。 それは皆さんに聞くとホテルのレストランの問題でなく、こちらの国民の食生活に起因していると。フランス人は大抵の人は毎朝はパン、ジャム、バター、カフェオーレで過ごしているのでは、その代わり、ランチ、ディナーは工夫しているとか。

 ロンドンのホテルは「ブリティッシュ・ブレックファースト」「コンチネンタル(ヨーロッパ大陸のこと)・ブレックファースト」と2種類あった。「ブリティッシュ・ブレックファースト」の有名で、朝からボリュームたっぷりだった。その代わり昼食、夕食とも高級レストランとローストビーフを別にしてまずかった。各国それぞれの食生活である。

 日本の朝食はご飯とみそ汁を基本にしているとはいえ、お惣菜、魚類、漬物、野菜、佃煮、うどん、そば、ラーメン等数えれば切りがない位種類も多く、その日の調子で何とでも選べるし調整できる。

 特に地方の旅館やホテルの朝食は普通の家の夕食並に出る時があり、お腹が空いていない時は脅威にさえ感じる程だ。各国の料理で好みもあるが、朝食だけは日本がバラエテェー・質・量とも世界一だと思う。 

 08時50分、ロビーに集合し小林さんの案内で出発した。リヴォリ通りで背広を着ていた小林弁護士に子供を抱いた女性が近ずいてきた。「新聞を買ってくれ」と言いながら接し、それを断ると手が内ポケットに伸び慌てて振り払った。あわやスラれそうになったと言う。しばし、その話題で騒然となった。「女性だから、子供を抱いているからと安心させる手口かもしれない」等とバスに入っても続いた。

 丁度09時にチュルリー公園前の「パリビジョン」(パリ観光バス)の事務所でベルサイユ行きを確認した。バス停4番に行き、小林さんが運転手に「帰りはどこに着くかね?」と尋ねると「昼、あんたの足元のそこに着くよ」言われ大笑いした。時間がきたので乗り込もうとドア側にまわるとフロントガラスが割れていた。日本では考えられないことでこの位平気なことなのだろう。

 外は寒いのに小林さんが見送ってくれた。 09時36分、「パリビジョン」のバスが出発した。パリ市内は朝のラッシュアワーなのか少し混んでいたが、しばらくするとブローニュの森の前を通った。(1994年1月1日記す)

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