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聞いた言葉・第220回目、捏造や廃棄など文書を軽んじる組織や人間は崩壊する

捏造や廃棄など文書を軽んじる組織や人間は崩壊する

 今回の言葉は、テレビ朝日の番組、<未解決の女 警視庁文書捜査官 Season2 最終回「影の斜塔」>(9月17日(木)放送分、原作:麻見和史 氏)からです。なお、私は、毎回のように書いていますが、この「聞いた言葉」シリーズ(もくじ)」は、本・新聞・映画・テレビなどの場面から引用、参照して書いていますが、その内容そのものの紹介ページではありません。あくまでも、書いてある、あるいは語られた言葉を思い出したり、解説しているものです。ただし、概要(場面)程度は、触れないと、全く状況が分かりずらいと思われますので少しは書いています。

 未解決の女 警視庁文書捜査官>の公式サイトは、ここからご覧になれますので、キャストやストリーなどの詳細は、参照願います。 最終回の放送時間は、約1時間で、しかも二つの殺人事件(過去と現在)、さらには、その真相や捜査中の展開が沢山の場面で、次から次へと変わっていくので、とても、その「あらすじ」さえも書ききれないものです。その点は、ご容赦願います。

 今回の言葉、番組後半に特命捜査対策室「文書捜査官」が、現在の参事官に突き付けたところで出てきます。その概略は、次の通りでした。参事官が当時、管理官として冤罪(えんざい)があったことを知りながら立身出世のためライバルをいずれ落とし入れようとして、捜査文書を改ざんし、保管していたという内容でした。そのことを見つけ出した文書捜査官達が、時系列的な表現の間違い=文書改ざんを指摘していた時の最後の場面で、主役の矢代明(波留)がきっぱりと、次の「」内通り参事官に迫ります。

未解決の女 警視庁文書捜査官」公式サイトより
 「参事官! 自分が6係に来て学んだことは、組織は文書によって動くもの。捏造(ねつぞう)や廃棄(はいき)など文書を軽んじる組織や人間は遅かれ早かれ、いずれは崩壊(ほうかい)するということです」

 そして、さらに、文書捜査官の係長から、「この改ざんされた証言記録を警視総監に提出する」と言われた後、この参事官は部下の室長に対して、「こいつらから証言記録を取り上げてくれ」と命令します。しかし、その室長は、ややとまどいながらも最後はきっぱりと、「公文書の改ざんは大罪だ。この組織から叩きだされるのは、あなたの方だ」と言い返されます。

 私は、今回の言葉「捏造や廃棄など文書を軽んじる組織や人間は遅かれ早かれ、いずれは崩壊する」は、単にフィクションの刑事ドラマだけかなあと思いました。歴史的に見れば、数えきれないくらい権力者(その年代、その当時の権力者名は当然違う)が、証拠などの文書などに関わってきたのではないでしょうか。

 例えば、国内では有名な大事件として2・26事件<昭和11年(1936)2月26日、陸軍の皇道派青年将校が武力による政治改革を目ざし、下士官・兵を率いて起こしたクーデター事件。内大臣斎藤実・蔵相高橋是清・教育総監渡辺錠太郎らを殺害、国会議事堂・首相官邸周辺を占領した。翌日東京市に戒厳令が公布され、29日鎮圧された。将校の大半は死刑となり、以後、統制派を中心とする軍部の発言権が強化された。(大辞泉より) >の捜査資料などは、極秘扱いでした。

 ただし、東京に戒厳令も敷かれた事件でしたし、新聞やラジオでも報道されていたので、国民も何かがあったかは知っていたとは思われます。しかし、その事件全体の真相や詳細までは知らされていなかったのではないでしょうか。なぜなら、軍として日本では絶対あってはならない軍事クーデターだったからです。そのようなこともあり、戦後も相当後の1987年公表、主任検察官だった匂坂春平(さきさか しゅんぺい)氏保管の検察官記録や、2019年8月15日、NHKで放送された「全貌 二・二六事件 ~最高機密文書で迫る~」(分単位で「2・26事件」を調べていた海軍の極秘資料)で、国民は事件の核心部分、時系列内容の詳細を知ることになりました。

 また、ミッドウェー海戦<1942年(昭和17)6月5日、ミッドウェー島沖で行われた日米両軍による海戦。日本機動部隊は、四隻の空母および多くの搭乗員を失い、戦局に一大転機をもたらした。(大辞林より)>の発表(文書)の時も先と似たような、真実を隠したものでした。国民には、日本海軍がまるで勝ったか、日米引き分け戦だったみたいな内容でした。しかし、日本は主力空母4隻をいっぺんに失い、多くの将兵が犠牲になった大敗北でした。この海戦の敗北を契機に、日本は転がり落ちるようになっていった真実を知ったのは、1945(昭和20)年8月の終戦以降、相当後になってからでした。

 (他にも、詳細は書きませんが、万人という単位で戦死者を出したガダルカナル戦やインパール作戦でも敗北し撤退したのに軍は、まるで作戦は成功したので「転戦」したみたいに発表しました。そして、その真実を国民が知ったのは、これまた終戦後のことでした)

 上記の有名事項で、結果は、どうなったでしょうか? この場合、隠ぺい・改ざん・極秘扱いの文書問題だけが要因では当然ありません。しかし、そのような全体の体質や状況がもたらしたものは、あまりにも大きな犠牲をともなうものだったのではないでしょうか。

 そして、現在でも、過去の事件などとの規模や内容の大小は別としても、もう有名事項にもなった「森友学園加計学園桜を見る会などの問題でも、先と同じようなことがおこなわれています。特に、(各社の報道通りならば)上司の指示で公文書を改ざんしたのに、結果、責任を痛感されてか、実務の部下の方が自殺されたという痛ましいことまでありました。また、直接的に公費の使われ方(税金の使用)にも関わって来る大きな問題もあります。さらにいえば、長年の政治不信で失われつつの状況下でも、まだ少しは残っていた公文書の信頼についても、”最後の一線を越えた”みたいな問題でしょう。

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 それらに比べ名も無き私のような庶民は、どうでしょうか。例えば、役所に出す文書で記入欄を間違えて書いたり、覚えが悪いため内容違いがあっても、キッチリ二重線で抹消後に書き直ししたり、新しい用紙をもらって再度一から書きます。恥ずかしいことではあるのですが、それは、提出文書が大事だからする行為です。そして、庶民は、詳しくは知らなくても法律(条例)に基づいた提出文書と、少しは自覚しているからでしょう。

 そのような法令順守を庶民はしているのに、その最も大元の指導すべき立場にある方や、「コンプライアンス重視」と声高に叫ぶ方々が、逆に公文書の改ざん・隠ぺい・廃棄などを自らのためにしているとなれば、どうなるのでしょうか? もうこれ以上書かなくても、今回の言葉「捏造や廃棄など文書を軽んじる組織や人間は遅かれ早かれ、いずれは崩壊する」の通りでしょう。

 また、何でも思い通りに出来ると思われ、その時、その場面では強大に見えている権力者=今回の場合「文書を軽んじる組織や人間」でも、「いずれは崩壊する」ということを長い歴史は教えています。そして、アメリカ合衆国第16代大統領アブラハム・リンカーンの言葉「全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない」にもつながっていくと思われます。

 ささやかな提出文書も大事にして、額(ひたい)に汗して働く国民がいる限り、そして「真実を自分で探す時代」に目を向けていけば、「明日の天気は変えられないが明日の政治は変えられる」のではないかと、今回の言葉を聞いて改めて、そう思いました。


(記:2020年9月21日)

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