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聞いた言葉・第221回目、大本営発表

大本営発表

 今回の言葉は、もう50年位前(私の高校時代)、当時、航空自衛隊にいた兄が、実家(父)へ送ってくれた近代の戦争史(いわゆる戦記もので約10巻)の中に書いてありました。ただし、本の名称は、残念ながら覚えていません。あと、毎回のように書いていますが、この「聞いた言葉(もくじ)シリーズ」は、私の若い時や以前聞いた言葉を書いているだけです。ですから、下記には、いくつかの戦史についての内容もありますが、軍事研究専門家みたいな知識もないので詳細なことも書いていません。その点は、あらかじめ、ご了承願います。

大本営海軍部発表(1941年12月8日)
<フリー百科事典:ウィキペデアの写真より>
  ここで、今回の言葉について、国語辞典や新聞の解説を下記に紹介します。
 大本営(だいほんえい)=戦時または事変の際に設置された、天皇に直属する最高の統帥機関。1893年(明治26)に制定。第二次大戦後廃止。(広辞苑より)

 大本営発表(だいほんえい はっぴょう)=1 太平洋戦争中、大本営が国民に向けて発表した、戦況に関する情報。末期には、戦況が悪化しているのにもかかわらず、優勢であるかのような虚偽の発表をくり返した。 2 転じて、政府や有力者などが発表する、自分に都合がよいばかりで信用できない情報。(デジタル大辞泉より)

 ミッドウェー海戦=太平洋戦争中の昭和17年(1942)6月5日から7日にかけて、ハワイ諸島北西にあるミッドウェー沖で日米両海軍の機動部隊が繰り広げた大規模な戦闘。日本軍の連合艦隊は空母4隻をすべて失う大敗を喫し、作戦の主導権を米国に奪われた。(デジタル大辞泉より)

 台湾沖航空戦の大本営発表内容=誤報の極みとされるのが、1944年(昭和19年)10月の台湾沖航空戦に関する大本営発表だ。5日間の航空攻撃の戦果をまとめた発表は、「敵空母11隻、戦艦2隻、巡洋艦3隻を轟ごう撃沈、空母8隻、戦艦2隻、巡洋艦4隻を撃破」。米機動部隊を壊滅させる大勝利に、昭和天皇(1901~89)からは戦果を賞する勅語が出された。だが、実際には米空母や戦艦は1隻も沈んでおらず、日本の惨敗だった。(2018年8月15日、読売新聞の<大本営発表はなぜ「ウソの宣伝」に成り果てたか>の「敵空母11隻、戦艦2隻撃沈…」幻だった大戦果」より)

 当然、上記の辞典や新聞記事みたいな解説にプラスして、冒頭に紹介した戦記物には、大本営の組織自体についても記述してありました。さらに、私が社会人になって、この大本営発表という言葉は、現在進行形で使われていることも知りました。

 その前に、この大本営についての補足ですが、上記の辞典にある通り、この組織は「天皇に直属 して陸海軍を統帥した最高機関」です。さらに自分流解釈で表現すると、大本営は当時の陸海軍エリート中のエリートが選ばれ、戦争の作戦の立案や指導をした組織だったと思っています。そして、その戦況を国民向けにおこなったのが、大本営発表です。このような大本営ですから、本来ならば正しい、信頼されるべき発表内容だったはずです。

大本営陸軍部発表(1942年1月3日)
<フリー百科事典:ウィキペデアの写真より>
 ところが、戦後になって、その真偽がどうだったかと言いますと、大戦初期の戦況を除けば、デタラメそのものの内容でした。いかに、この発表内容がヒドイかと言いますと、その代表例が、ミッドウェー海戦と台湾沖航空戦が一般には多く論じられているようです。ミッドウェー海戦は、当時の日本海軍が所有してた大型空母も含めて4隻も失ったのに、日米の戦果は互角か、まるで少し勝ったみたいな大本営の発表内容でした。

 台湾沖航空戦は、先の読売新聞記事にある通り、「誤報の極み」そのもので「敵空母11、戦艦2隻轟沈」などというとんでもない発表でした。(事実はアメリカ空母は1隻も沈んでいない)  しかし、その後、先の発表内容は、大間違いであったことが海軍内部の調査で判明しても、一緒に戦争しているはずの陸軍や国民には、その真実は知らせませんでした。結果、国民は久々の大勝利ということで、お祝いの提灯(ちょうちん)行列を行い、「台湾沖の凱歌」(サトウハチロウ・作詞/古関裕而・作曲)という歌もできたのでした。

 この発表のおかげ深刻だったのが、陸軍でした。陸軍は、フィリピンの戦いで、防御陣地も構築してルソン島で決戦するのが当初予定でした。しかし、大間違いの戦果ながら、「台湾沖航空戦で海軍が大戦果をあげたので陸軍も勝とう」あるいは「もう恐れるアメリカ空母は沈んだので攻撃は難しいだろう」との判断からか、準備も補給もできていないレイテ島での戦いへと作戦変更したのでした。

 だが、レイテ島は離れているので補給をするにも、そのための船舶はアメリカ軍に沈められ、充分な武器、弾薬、食料も不足で戦闘準備も不十分なまま戦い、結果、惨敗と退却でした。このような状況では、ルソン島での戦も影響を与え、結局はルソン島でも惨敗して、日本軍全体で多大なる犠牲者を出しながらフィリピンも失ったのでした。

大本営発表を元に報道された一例
(1941年12月9日付け朝日新聞より)
 つまり、大本営が正常に機能していれば、この大戦中も戦後も、先の辞典や新聞記事などの解説はあり得ないものです。また、さらに問題だったのは、本来ならば大本営や政府の発表を点検して、できるだけ正確な内容を国民に伝えるべきの新聞やラジオ(当時のマスコミ)は、検閲があったため、あるいは報道自らの戦意高揚(せんいこうよう)も含めて、大本営発表を鵜呑み(うのみ)にして、「勝った。勝った、また勝った」みたいな内容ばかりを続けたことです。

 先の大戦全期間通して、大本営発表報道によって、国民へは正しい戦況などは何ら知らされず、だまされ続けて、広島・長崎原爆、全国各地の空襲や沖縄の地上戦などで民間人も多大なる犠牲者を受けたのでした。どんなに軍人や国民が亡くなっても、結局、大戦中には。、大本営発表も報道も改まらなかったといえます。

 ところが、そのようなことは終戦後、何十年経っても現在も、この「大本営発表」みたいなものは、生き続けてきました。だからこそ、先の国語辞典にも解説されているのだといえます。あと、現在もある例として「今の首相発言は大本営発表だ」や「この前の会社計画は、結果、大本営発表で社員は、だまされただけだ」みたいな言葉が、堂々と通用しているのです。

 ただし、戦時中の大本営発表内容は、映画(映像)や新聞記事に、しっかり残っています。しかし、現在の大本営発表みたいな政府見解や首相答弁は、自分達に都合が悪くなれば公文書さえも改竄(かいざん)、隠蔽(いんぺい)、廃棄(はいき)などまでおこなっています。また、「桜を見る会前夜祭」問題では、安倍首相の国会における虚偽答弁(きょぎとうべん)が、118回もあったと報道されています。こんなやり方が通用するなら、国会の論戦そのものが、成り立たなくなる問題でもあります。

 さらに、森友学園の土地問題では、官僚が加担させられ自殺に追い込まれた方さえいます。また、このような大本営発表をする人は、他人には「説明責任をはたせ」と言うくせに、自らはしない、あるいは「秘書が、秘書がやっているから(自分は責任ない)」と、秘書や他人へ責任転嫁(せきにんてんか)するのも共通した特徴でしょう。それは、「一将功成りて万骨枯る」みたいなものです。

 また、このようなことは政府だけでなく、民間会社でも似たようなことがあるのではないでしょうか。例えば、会社の事業計画を根拠ある実際数値で立てるのではなく、単なる希望的観測数値へと無理に置き換えたり、自らの失敗は隠し、他部・他課や部下に責任転嫁する場合もあります。しかし、自らの周囲にいわずにいても、別の人(お客様や他社の方)から教えてもらって、ことの深刻さが始めて分かったとか、様々あるのではないでしょうか。

私の関係ホームページ
 空気で作られた「真実」と「正義」
 明日の天気は変えられないが明日の政治は変えられる
 全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない
 李下(りか)に冠(かんむり)を正さず
 反対意見にも真理あり
 真実を自分で探す時代
 ○○の大儀、私心なくば揺らぐことなし
 報道が仕えるべきは国民だ。統治者ではない
 毒にも薬にもならない話し
 「日本型経営」が危ない
 大局観察、小局着手
 常に自制心と謙虚さを持って
 若い科学者1人の価値は老いた政治家20人分だ
 雰囲気選挙より政策の判断を
 魚と組織は頭から腐る
 国語辞典の解説だけでなく、現在も大本営発表が生きているかぎり、政治上で一番の被害者は国民(庶民)です。そのような大本営発表をおこなっても、何も思わない国会議員は、議員を続けるだけでも問題です。このような状況に対応できるのは、一人一人では弱い国民でも行使できる権利=選挙で、せめて「大本営発表する」人を二度と選ばないことです。

 あと、会社内(特に、日本独特の雰囲気のある職場)では、<空気で作られた「真実」と「正義」 >ページにも書いていますが、ある作られた雰囲気・空気の中で、正しい指摘(この場合、少数意見)を発するのは、なかなか勇気のいることです。そのようなことが続くのであれば、一人ではなく自らの意見に同調して下さる方(仲間)を増やして、まとまって意見し行動しないかぎり直らないのではないでしょうか。

 私は、この「聞いた言葉(もくじ)シリーズ」で何十回となく繰り返している言葉があります。それは、「全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない」と、「明日の天気は変えられないが明日の政治は変えられる」などの言葉です。これらは、決して夢物語ではなく、実際に日本人の多くが体験して感じてる事柄ではないでしょうか。

 戦争中ならば誰もが「大本営発表は間違いだ」といえる状況ではなかったと思います。だからこそ、「勝った、勝った、また勝った」みたいな報道も続きましたが、それはデタラメ内容であり、結果は敗戦(終戦)になったのでした。逆に見れば、いかに強大な力(この場合、陸海軍)を持ってしても、「全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない」のです。

 また、現在ならば<空気で作られた「真実」と「正義」 >のある所でも、元々、真に根拠あるものから発していないので思いもよらぬ所から、いずれ破綻(はたん)するのではないでしょうか。また、一見強大にも見える会社(組織)でも、いつまでも「無理が通れば道理引っ込む」ばかりのやり方では、長続きしないと思われます。


(記:2021年1月11日)

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