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聞いた言葉・第228回目、「今は戦争の時ではない」(No time for war)

「今は戦争の時ではない」(No time for war)

 今回の「今は戦争の時ではない」(No time for war)との言葉は、2022年9月16日、インドのモディ首相の発言からです。(この言葉の出典や詳細は、共同通信の「今は戦争の時ではない」ページから、ご覧ください)  先のリンクページ通り、ウズベキスタン・サマルカンドで上海協力機構(SCO)首脳会議が開催され、ロシアのプーチン大統領も出席しました。これに合わせて、この大統領と会談した時に、今回の言葉はモディ首相から発せられました。何故か。それは2022年2月24日からプーチン大統領のロシア軍は、「特別軍事作戦」と称して、ウクライナへ侵略戦争を仕掛けて、(今回の発言のあった9月現在で)約7ヶ月経っても戦争が続いていたからでしょう。

 私は、これから色々と書いていますが、先に、この言葉をニュースなどで聞いた時の感想を極簡単に言います。この発言内容は、「当たり前のことながら、なんか新鮮で、将来展望をも感じられる言葉だなあ」と思いました。今回と似たような言葉は、先の大戦(第二次大戦、太平洋戦争など)直後頃は、世界中の国々でも同様に語られてきました。また、表現の違いは各国であっても、「不戦の誓い」もあったのでした。

 それだけ、先の大戦時に広島•長崎原爆を始め空襲や戦闘などにより何百何千万という人や動物の犠牲、民家、病院や学校含めて建物や資源も莫大な被害があったからこそ、「これからは、もう戦争は止めよう」となっていったのでした。しかし、その後も朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争、コソボ紛争、湾岸戦争など、規模の大小や国家間の違いはあっても多くの戦争があり、現在進行形で続いてもいます。

 今回発言されたモディ首相のインドでも例えば「インド、パキスタン戦争(印パ戦争)」、「中国、インド国境紛争(中印国境紛争)」などもありました。また、逆に中国との平和的な事柄として、1954年に「平和5原則=インド首相ネルーと中国首相周恩来との共同声明の中にもられた両国の国交の五つの原則相互の領土と主権の尊重相互不可侵内政不干渉平等互恵平和的共存からなる。」(デジタル大辞泉より)も結ばれています。この平和5原則は、当時、世界中から国家間の規範的事項として高く評価されました。ただし、その後もインドと中国と間では、いくつか紛争はありましたが、2国間の全面的な大規模戦争まで至っていないようです。

 戦争について、何も有史以来の人類規模で考えなくても、どこの国も国民も戦争による悲惨さ、真の国家間の解決をもたらさないことは、十二分に学んでいます。そして、国際化の現在において、どこか遠い国の戦争でも、世界中の国々や国民生活までにも直接、例えば食糧や物不足、さらには物価高まで影響を与えているのも、ご承知の通りです。

 また、私は戦中生まれではないものの、それなりの歳となり経験上、先と関係したことで見聞きした例もあります。朝鮮戦争の後、「また朝鮮有事もありうる。明日にでも日本は攻められる」みたいな表現を何十年間も毎年のように(特に予算編成時期に)大声を出している政党や勢力も見聞きしました。近年は、「台湾有事」との言葉も、よく耳目にします。しかし、そのような方々から外交交渉とか平和外交の取り組みなどを言ったり、聞いたことは、どれだけあるでしょうか?

 日本の外交は、まるで、どこかの国々を常に仮想敵国に見立て、外交より軍事優先こそが極意のごとく見えます。戦後約80年間ずっと、そんなに日本が「有事だ!、危険だ!」と言うならば何故、春の大型連休や夏休み時季などに毎年、大臣や国会議員は、出張や外遊と称して諸外国へ行っているのでしょうか? その国と仲良くして、話し合い、または何かの調査や研究をして、お互いの国家や国民のために外交も含めてしているのではないのですか?  そのような回数が多い割には、なぜ外交の話や成果が無くて、戦争準備だけは優先して予算規模が膨れ上がり、税金も物価も上がっていこうとしているのでしょうか? 庶民感覚では、全く理解できないことです。

 日本は、世界唯一の被爆国でもあります。何故、日本政府は核兵器禁止条約に不参加でしょうか? アメリカへの遠慮などがあるのかもしれません。しかし、唯一の被爆国の政府が声を大にして世界へ訴え続けていかない限り核兵器禁止は、加速度的に進むのでしょうか。また、この禁止条約に賛成されている多くの国々の方は、広島・長崎原爆の惨状を見ておられるとも思えますが、このような国に対して失礼とは思わない日本政府なのでしょうか。全世界から核兵器の廃棄(廃絶)が望ましいですが、まずは、この禁止条約でも原爆による多くの犠牲者に報いて、さらには現在も将来にも生きる人々のためになるでしょう。

 日本は、戦後一貫して政府•与党含めて「専守防衛」(下記の用語解説を参照)を貫き、国是のような経過があります。この言葉の意味は、極簡単に言えば日本は「戦争を仕掛けない国」です。しかし、2022年12月、報道各社が、ほぼ一斉に同じような内容で、国の防衛政策の大転換内容を伝えました。(その一例として同年12月24日、TBS報道特集番組で「安全保障最前線 防衛政策の歴史的大転換」と報道しました。この詳細は、先のリンク先ページをご覧願います。

 この内容を、より分かりやすくすると、戦後ずっと日本は、「他国から仕掛けられない限りない戦争をしない国」(専守防衛)だったのですが、今後は「“敵基地攻撃”とか“反撃能力”」とかの言葉を用いながら「戦争をする国」にしようとしているのです。このことを、どれだけの国民が知っていたのでしょうか。そして、例えば近年の衆議院または参議院の国会議員選挙で国民は、先の「防衛政策の大転換は理解した」として、その議員達へ白紙委任したのでしょうか。

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 あと、「戦争は自分とは関係ない」と言う方へ、果たして、そうでしょうか。毎日のように報道されているウクライナの悲劇(子どもまでも犠牲、病院、学校までも空襲、零下10度以下にもなる真冬で電気さえないなど)は、この日本でも約80年前に至る所であったことと似たようなことです。

 以上のようなことから、私は改めて今回の言葉「今は戦争の時ではない」こそが、最重要であり、現状解決と将来展望にも繋がる方向とも思えます。たとえ一人一人の力は、限度限界があったとしても、子や孫を持つ世代、現役や若者世代などを超えて、全体で訴えていくことが今回の言葉の持つ意味ともいえます。
------<用語解説>-----------------------
平和5原則」(デジタル大辞泉より)
1954年、インド首相ネルーと中国首相周恩来との共同声明の中にもられた両国の国交の五つの原則。相互の領土と主権の尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和的共存からなる。

専守防衛」(せんしゅぼうえい)(デジタル大辞泉より)
他国へ攻撃をしかけることなく、攻撃を受けたときにのみ武力を行使して、自国を防衛すること。武力行使を禁じた日本国憲法下での自衛隊の主任務、性格についていう語。
 


(記:2023年1月2日)

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