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聞いた言葉・第7回目、『毒にも薬にもならない話し』

毒にも薬にもならない話し

 私の学生時代、(亡くなった)父が親戚か何かの会合に参加し、帰宅後よく「どやつも、こやつも(どいつも、こいつも)毒にも薬にもならない話しばっかりしやがって・・」と言って怒っていました。私は、その意味を多分聞いたと思いますhana01.gif (109146 バイト)が、その当時言っている主旨も実感も、分かりませんでした。
 
 父は、若い頃、戦争に2度も召集され、中国、フィリピン、インドシナ半島やビルマなどの激戦地を転戦しました。片耳が聞こえない傷痍軍人出身で、多分に死線を越えた経験も数多くあったと思います。

 そのような体験と併せて、父は、親戚や町内などの会合参加者の中で年齢的にも高く、ある種何でも言える立場でした。それに、性格そのものも、物事に対しズバズバ言うタイプでした。

 私も、それなりの歳になり、会社などの会議に出席し、この父の言っていた意味をいやと言うほど実感しました。早い話し、この言葉の意味は、「当り障りのない」、(もっと極端に言えば)「全く、まわりの者と同じような意見で、役に立たない」と同意語だったのです。また、日本人は良く、「島国根性」とか「長いものには巻かれろタイプ」などと言う人もいます。これらの言葉も、ほぼ、似かよっていると思います。

 私は、5時間の会議なら5時間、2日間にわたる会議なら2日間とも、じっと自分の意見を言わない人も多く見ました。そのような人を見ると、ある面、我慢強いのかなとも思えました。ただ、そのような人に限って、会議終了後の飲み会(や日常普段の話し)の中では、息せき切ったように自分の意見を言い出すのも多く見てきました。

 会議などでは、人と違った意見を言えば、目立つし、事柄によっては言い出した本人が責任持って担当する場合も出てきます。また、中にはその時その場の雰囲気を気まずい思いにして、皆さんから非難、嘲笑を受ける場合もあるでしょう。自分の考えを言わない限り、他の方から嫌われることもないし、逆に「あの人は、いい人だ」と言う評価が定着していると思います。

 私も、自分自身の意見や表現力を常に持ち、話しできる人をうらやましく思うことがありましたので、全部が全部そのことを否定できる訳がありません。ただ、1日間とかにわたる会議でじっとしているのは、我慢できない性格でしたし、結果、色々と担当を引き受けたこともありました。

 私は、今の雇用悪化の情勢下、当然失業も経験しました。新たな就職先を求めるには、「自分には、これができる。(各種資格も含む)だから、雇って欲しい」と明確に言わないといけない時代だと痛感しました。

 私は、仕事だけではなく、生活環境においても、常に「毒にも薬にもならない話し」だけで、こと済む状況なのか、率直に感じることもあります。かといって自分の考えを人に押し付ける気持ちもありません。十人十色の意見があっていいように、各々自分の考えを述べることは、決してマイナスではなく、長い目で見ればプラスにもなると思います。(記:2001年11月2日)

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