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聞いた言葉・第122回目、『考えは変わりやすいが、体質は変わりにくい』

考えは変わりやすいが、体質は変わりにくい

 この言葉について、私は25年程前に(大阪にいた頃)航空の大先輩から聞きました。この方が言うには「会社や様々な団体を構成している(例えば社長、代表者あるいは常勤の役員、幹部クラスなど)人達は、その時々の情勢の変化に対応して考え方自体は変わりやすい。しかし、意外とも思えるくらいに組織の体質そのものは変わりにくい。良い所がそのまま残るのはいいが、逆に悪い面の体質は変わりにくく、なかなか良くならないものだよ」と述べておられました。

 ここで国語辞典の大辞泉を引くと体質とは、<1 からだの性質。遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される、個々人の総合的な性質。、 2 団体・組織などがもつ、性質や特徴。>などと書いてあります。今回のテーマは、会社、団体などがメインですので、当然後半の2に解説してあることです。また、どこかの特定の会社や団体を指しているのではなく、国語辞典と同じように社会一般にあまたある会社・団体・組織などと共通している事柄です。

 その会社・団体・組織などで、今までにないことが急に変わったと感じるのは日常目に触れる場合もありますし、また詳細な内情までは分からなくても、例えば当該のホームページで今まで書いていなかったような会社の基本的な考えとか、顧客に対してサービス内容の変化なども見つける場合もあります。

 つまり、ある会社・団体・組織などの「考え方の変化」は、誰でも変わったことを言いたいし、また、そのことの変化は受け手(部外者や消費者)なども、たとえ外部にいても割合知ろうと思えば分かりやすい事柄かなあと考えられます。しかし、体質=「 団体・組織などがもつ、性質や特徴」の変化は、直ぐに短時間では分かりにくいと思います。

 また、そこの会社・団体・組織などに所属している人達も、考えは変えても体質までは急に変えられないような気がします。例えが難しいですが、(良い悪いとか言うことの是非は別として)何でもトップダウン式で物事を決めていた会社なら本社でも各支店でも似たようなことが行われていたでしょう。

 それが、社長や役員体制が大きく変わり、その時点で会社の基本的な考えが変わったと業務通達に書き、仮に「今までの何でもトップダウン決定方式は止める」と徹底しても、本社から支店まで急に学校の体育時間のような「全体整列!、右向け右!」の号令みたいに変わるものでしょうか。

 例えがさらに適切ではないかもしれませんが、今まで50年間、一日三食とも和食を食べていた人が、「美味しいから三度とも洋食にしなさい。(ただし条件も負担も同じ)」と誰かから言われても、1週間、一か月と食べ続けることとが急にできるでしょうか。このような食事と体質の話は、根本的に違うかもしれませんが、ちょっとだけ似ている雰囲気もします。つまり、それほどまでに何年何十年と続けてきた、そこの会社・団体・組織などの体質は、急には変わり切れないのではないかなあと思います。

 また、別分野ながら政治(政党)の世界でも同じようなことが言えます。今まで表面上や選挙の時だけは国民向けのポーズをして、実際のところはアメリカ追従と大企業奉仕の政治を長年続けてきた与党が政権交代により野党に変わっても、これまで続けて来た根本は急に変わらないと思えます。また、その政治を陰に陽に支えてきた中央官庁の特権幹部や一部のマスコミも同様と考えられます。また、別の見方からすれば野党から与党に変わった政党も、これだけの変化があっても(事柄の大小は別ですが)引きずっている体質はあるような感じがします。

 物事全てにおいて不器用で、人のお世話になりながら生活している私がこのようなことを言うのも誠におかしな話ですが、「考えは変わりやすいが、体質は変わりにくい」の根底には、「人間そんなに器用ではない」と言うのもあるのではないでしょうか。

(記:2009年10月17日)
  

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