TOP INDEX BACK NEXT

聞いた言葉・第67回目、考古学は未来学

 
考古学は未来学

 
長崎歴史文化博物館にて2006年12月22日から2007年2月14日まで、『早稲田大学創立125周年記念 吉村作治の早大エジプト発掘40年展』が開催されています。(参照:日時やチラシなど長崎歴史文化博物館より) この展示開催を前に吉村先生が、テレビ番組で展示の意義などについて熱っぽく語られておられました。

 その話の一説に今回の「考古学は未来学」という言葉がありました。また、「夢は札束より価値がある」とのお話も印象深く、私は聞きました。テレビだったので、詳細に覚えていないのですが、この「考古学は未来学」と言う意味は、先生いわく「過去をひも解くことにより、未来が見えてくる」と言うことであり、概要(発掘調査などにより)「過去に起こった数多くの事例を丹念に調査していけば、今起こっていることが今後どうなるのか、将来何が起こるのかなどが予測できる」との説明でした。

 さらに話は、今回の展示で一番の目玉になっています『青いミイラマスク=セヌウのミイラマスク』や『セヌウの彩色木棺』などについて、発掘当時の映像もまじえて、具体的に、より一層分かりやすく熱心に語っておられました。

 私は、この放送を見ながら現在生きている私達は、各種メディア、光ファイバーや人工衛星を含めたスピードあるいは多方面からの物凄い情報化社会の中にあっても、それらの情報は現在起こっているほんの一部の事例なんだなあと思いました。

 つまり、人類が何十万年も経験した長い歴史に比べれば、一見進んだようにも見える現代技術をもってしても、まだまだテクノロジーだけでは予測し得ないものも多いのかなあと感じました。実際、世界で起こる例えば大地震や(気象情報がかなり進んでいても)台風やハリケーン被害など、目を被うばかりの惨状も毎年のように報道されています。

 また、第二次世界大戦後どこの国においても「二度と戦争・紛争は起こしたくない」と誓ったはずなのに、その後の世界の流れは「不戦の誓い」を物の見事に裏切ることが続いている現実も、またしかりです。

 人は明日の天気は変えられませんが、人間同士で起こしていることを少しでも解決する方法をあみだしたりもしました。あるいは自然災害でも被害はたとえ出たとして甚大にならないような対処策など、大先輩たちはコンピューターも重機もない時代に様々アイデアを駆使しておられます。

 それらの多くを丹念に発掘調査していけば、私達の大先輩でもある昔の人達が何らかの形で残してくれている知恵や財産の中に、これから起こりうることを少しでも予測できて、ひょっとしたら困難なことを前にして、その対処策が事前に準備できる可能性も、この「考古学は未来学」に秘められていると思いました。

 また、このことばは言外に環境破壊や紛争の絶えない現在の地球人に対し、「現代人よ、未来や将来に向かって、もっと謙虚に考え、もっと慎重にせよ」と、4千年、5千年前の人からの伝言ではないだろうかと思うのは考えすぎでしょうか。

(記:2007年1月3日)

TOP INDEX BACK NEXT