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聞いた言葉・第85回目、『米にまつわる言葉』

 

米にまつわる言葉

 私の住んでいる大村市では、その時々の収穫時期の差はありますが、たいてい10月下旬には新米が食べられる季節となります。私自身も毎年、この時季、兄が作ってくれた新米をもらいます。今年度(2007年)産米も10月下旬に食べました。(このページ掲載写真は、2003年10月5日撮影で収穫前です)

 新米は、毎年このように味わうのですが、改めて「あー、新米は違うなあ。うまいなあ」と極々単純な言葉ながら、つい出てしまいます。あの真新しい色艶(いろつや)、ふっくらとした盛り上がり、粘りけのある口当たり、何回もお替りをしたくなるような食べ心地など、やはり全然違うと思います。

 また、獲れたてを直ぐに食べられる、この喜びは”田舎の特権”かなあとも考えています。さらに言わせて頂けるなら、日本に生れて良かったとも思える瞬間でしょうか。

 ただ、日本の米を取り巻く状況は、外国産米の輸入その他で、年々厳しさを増していて、 それは高値で毎年取引されているブランド米でも同じような状況になってきています。この米を取り巻く状況について、既に私の「聞いた言葉シリーズ」の『瑞穂の国』ページに少し書いています。

 今回は『瑞穂の国』ページにも一部書いていますが、米にまつわる言葉を取り上げてみたいと思います。念のため、先のページと重複している項目は、ご容赦願います。また、下記の用語例は一般に言われていることを私の解釈で書いていますから、国語辞典みたいに正確でないことも、ご了承の上ご覧くださらないでしょうか。

・新米の社員=新入社員のこと。
・年貢の納め時=元々は税金として米を納めていたが、それが転じて「独身生活を楽しんだから、そろそろ配偶者を持って社会的義務を果たすべきだ」などに使う。

・青田買い=元は米の大豊作が予想されるので米が余剰過ぎないように実らない内に稲穂を刈り込む時に使われた言葉だが、そのことから転じて、会社が人材確保のため、来年度卒業予定の学生を早くから採用内定することの意味に使われる。
・同じ釜の飯を食べた仲=例えば同じ学生寮とか会社の独身寮などに一緒に住んで同じご飯を食べた仲間関係を言う。

・米寿=数え年88歳を漢数字で表した場合「八十八」となり「米」を分解した文字であることから、米寿の年と言われている。
・腹持ちが良い=米や餅(もち)は消化が遅いので、例えば「餅は腹持ちがいい」とか推奨される言葉に使われている。
・おくて(晩生)=早稲(わせ)などに対し成熟の遅い米のことで、ここから転じて例えば「あの人は”おくて”だ」などと言われている。

 上記の例以外にも、米が原料である例えば日本酒、寿司などに関係している言葉なども含めれば、いくつあるのか想像つきません。このように日本人は縄文や弥生時代の頃から長い年月、米を主食として食べ続け、さらには米が貨幣や税金の替わりになったり、あるいは神棚や神社での儀式などにも稲穂や米が使われていることでもお分かりの通り、宗教との関係も深いものです。

 つまり、日本人にとって米は単なる食物ではなく、経済でもあり文化でもあり、また宗教にまで通じる作物であると言うことでしょうか。私は諸外国の主食と文化などの関係は不勉強のため知りませんが、日本人と米の交わりは、本当に深いような気がします。大昔から、そのように大事にして米が、現在では年ごとに深刻化してきていることは、皆様ご承知の通りです。

 その原因などについては先にご紹介しました『瑞穂の国』ページにも書いていますが、私は様々な諸問題はあるにせよ、古来より日本人が本当に大事にしてきた米を、戦後ずっと続いている農業政策(”ノー政”とも批判されている)がダメにして、そのことが分かりつつも将来の解決策さえ見通せない政治そのものから来ていると思います。今回の『米にまつわる言葉』の多さからもお分かりの通り、日本人の大先輩達は何かを語りかけておられるような気がします。


(記:2007年11月1日)

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