パリの空の下
今回のこの言葉は、フランス映画『巴里の空の下セーヌは流れる』の主題歌『パリの空の下』(Sous le ciel de Paris)からです。ただし、私は、この映画はいまだにビデオやDVDでも見たことがありません。ですから、今回映画のことではなく、主題歌の感想などを書いていますので、ご了承願います。
このシャンソンの名曲を私が知ったのは、以外と早く小学生の頃だったと思います。「私が」と言うより長崎県在住の方なら、曲名までは知らなくてもメロディーだけなら誰でもご存知だと想像しています。なぜなら、長崎市内の眼鏡屋さんのテレビコマーシャル時に流れる曲が、このシャンソンなのです。
特に、その時々の絵画などを紹介されている日曜日のテレビギャラリーでは、繰り返し流されているので子供の頃から耳の奥に、このメロディーは残っています。今も放送されていますから、もう何十年続いているのでしょうか。正確さは欠きますが、私の記憶だけでも40年以上かもしれません。
ただし、私はこのシャンソンの超有名曲のメロディーは知っていても、題名はずっと知らないでいました。高校生の頃に映画『巴里の空の下セーヌは流れる』の主題歌と知りました。曲名は『パリの空の下』です。(もしも曲をご存知ない方は検索サイトに「パリの空の下」と入力されてページを開いて頂くと、この曲が流れるページがあります)
ただ、私はこの当時、誤解して映画の題名=曲名とずっと思って、その後10数年間過ごしました。そして、1986年2月始めての海外旅行(『ヨーロッパ3空港旅行記』をご参照願います)=始めてのパリで、この間違いが分かりました。この時、このセーヌ川周辺を何回も歩きました。同行して頂いた皆さんと一緒に夜のとばりも降り、少しほろ酔い機嫌になった頃、道を歩きながら通訳の方が原語で、この曲含めて何曲もシャンソンを歌われました。
この時、「あー、シャンソンは日本で聴くのもいいけど、現地パリで聴くのは、一層雰囲気があっていいなあ」とつくづく思いました。この時、長崎で子供の頃から聞いていたことなどを話していた時に、やっと自分の曲名の覚えが間違いだったと分かりました。1回先入観で覚えると、なかなか変わらないものだとも思いました。
シャンソンの似合う季節と言えば、私は1993年10月の旅行(『スイス・パリ旅行』をご参照願います)を思い出します。この時、パリで私たちを世話して下さった日本人ガイドの方が、大通りを案内しながら「このようにマロニエの並木に葉っぱが色づいた頃が、パリが最もパリらしいですね。シャンソンも合いますしね」みたいなことを言われました。私は、何十年も住んでおられる方の実感だと思いました。
あと、この曲は子供の頃から聴いたと先に書きましたが、このテレビコマーシャルを聴く時間帯が、秋や冬なら夕飯時間かその準備の頃だったと思います。なんかこの曲が流れると、落ち着いた気分にさせられたのを覚えてもいます。なだらかに流れるような感じも当然いいですが、アコーディオンで弾くようなチャッチャッチャと歯切れのいいのもシャンソンらしいですし、また、編曲しだいでは現代風にアレンジしたのも、今風です。どんな曲想になってもいいのは、名曲の名曲たる所以(ゆえん)でしょうか。
色々な情報によりますとシャンソンの母国フランスでも現代のアメリカやその他の国から入って来る曲に押され、シャンソンの地位が狭くなっているとも聞きました。音楽は、その人の好みですから、そうなることはやむを得ないことかもしれません。でも、哀調をおび、心からなんかゆったりと満ち足りた雰囲気にさせるシャンソン、表情豊かな、情感のこもった旋律も、こんな時代だからこそ余計いいのではないでしょうか。 (記:2005年10月28日)