日本売り
今回のこの言葉日本売りとは、元をたどれば外国の投資家などがそれまで保有していた日本企業の株あるいは円や国債を売りに出すことを言うようです。 この言葉自体は、近年言われていることではなく、ずっと以前からあります。特に、どうもあのバブル崩壊前から言われていたようですが、 株などもしない経済に関しては全くの素人の私でも 最近また様々な報道などから見たり、聞いたりする言葉となりました。
あのバブル崩壊前、日本は「世界第二位の経済大国だ」、「日本に見習え」とかの言葉も乱れ飛び、ジャパン アズ ナンバーワンとか言う本まであったような気がします。 さらには戦後の経済復興、高度成長なども含めて「経済は一流、政治は二流」などの話も良く聞きました。
株と言えば私のような者でも、一般論として「売り」、「買い」で成り立っているものだと思っています。 ですから、ある会社に好調な要素があれば株は買われるでしょうし、逆に企業が何か不祥事その他の不安材料があれば、その株は売られるは当然のことだと思います。
また、たまに政治家や評論家などが「株高に一喜一憂しない」みたいなことを評されているのは、 ある意味では当たっているのかもしれません。さらには、何か特定の原因一つで日本全体の株が保有価値ゼロみたいな極端なこともないとも思えます。
ただ、株取引で大きな影響を与えたことで思い出されるのは、1929年10月24日にニューヨーク株式市場で株価が大暴落したことによる世界恐慌です。全世界で数千万人の失業者を始め様々な社会不安も起き、その後第二次世界大戦へと進んでいったとも言われています。この恐慌の影響は日本でも同様で当時のことを昭和恐慌と呼ばれているくらいですから、株価は軽視できないことも事実です。
改めて日本売りの言葉を近年また、なぜ良く聞くかと申しますと、あのバブル崩壊前から、 その原因はありましたし、今はさらに深刻化していると思われることが数多くあるからと思います。
このようになった要因は、一つ二つではなく複合的に絡み合ったものでしょうし、事実は事実はとして 例えば経済指標を見る上でいつも言われているGDP(国内総生産) 貿易高、失業者数、企業倒産数、整備投資など 多くの基礎的数値や様々な諸問題含めて過去数十年にわたって冷静に分析する必要もあるかと思います。 そのような中で現在、報道などで日本売りの言葉を使う時に主な原因として特徴的に言われているのが、次の
1)世界経済における日本の地位が低下している
2)日本の長期ビジョンがない
3)長年、政治(政策)が、経済をリードしきれない
などが、一般的なようです。
もう少し、上記を補足するとアジアで日本は一時期、政治力はなくても、その経済力でそれなりの存在感はありました。 しかし、経済発展めざましい中国やインドを始めアジア諸国内で政治力だけではなく経済力も相対的地位の低下が著しくなっています。世界レベルで見ても似たようなものでしょう。
また、戦後一貫して(半世紀越えても)日本の政治は、軍事面を筆頭に経済面でも”アメリカ従属型政治”(今でも、「日本はアメリカの一つの州か植民地みたい」と酷評する方もいますが) で来ました。
その結果たとえばアメリカ自身がイラク戦争の大義名分にしていた大量破壊兵器の存在その他を否定しても、 ずっと日本はアメリカ言いなりで加担していますが、このことが端的に分かる例だと思います。(この件は、私の「聞いた言葉」シリーズ第68回目「真実を自分で探す時代」も ご参照願います)
つまり終戦後60年以上たつので、本来ならもうアメリカ支配から脱皮して政治でも経済分野でも自らの頭で考えて対等平等な国関係になり、日本の将来ビジョンを描き世界に示さなければならないのに次の5年、10年さらには50年先の日本の姿が描ききれない=見えてこないと言うことだろうと思います。
さらに一部の大企業や大金持ちを除けば、庶民の多くがなんとか生活している状況、あるいはもっと困っている人は失業者、中小企業の倒産さらには「年金不安」、「老後の不安」、「過労死」、「格差社会」、「ワーキングプア」、 「ネットカフェ難民」、「年間自殺者3万人」とかの言葉で象徴されている状況だと思います。そのような経済を改めるようなことをせずに、あるいは困っている人達を救わずして、 いつまでも政治献金を沢山下さる大企業を優遇する、またはアメリカ言いなりの政治を長年続け、その結果なにも根本解決がなされない袋小路状態だと思います。
諸問題の激化に対して選挙の時やマスコミの前では、一応「国民のため」とか「現状問題を解決する」とか口当たりのいい政策を言ってみても結局実際やっている中身そのものは何ら解決せずに戦後一貫して(現在も)”大企業とアメリカ奉仕型政治”が変わらない(=国民が騙されている)政策と言うことだと思います。
このような政治や経済不安を抱えている日本なら、先の展望がないと思って外国の投資家が日本売りをするのは当たり前のことで、かわりに他国を探すようなことは自然の成り行きだと思います。これらをどう解決していくかについて考えた時、従来型の、あるいはその延長線上の政治や経済政策では何ら解決し得ないことは、もう先に述べたように既に歴史が証明しています。
私は、聞いた言葉シリーズ第25回目「経済=経国済民」にも書きましたが、経済の語源である”経国済民”=国を経め(おさめ)民を救う」立場での政治が必要と書きました。もしも現在の国民の対極にあるような”大企業とアメリカ奉仕型政治”が、あと何年も続くようなことになれば私のような素人目にも日本売りは、より深刻に加速度的に進むような気がします。
しかし、日本人は明日の天気を変えるほどの力はないかもしれませんが、国民の対極にあるようなヒドイ政治や日本売りが続くような経済政策は、その根本から変える英知も馬力もマダマダ持っているのではないかとも思えます。