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聞いた言葉・第172回目、『会社再建は従業員の再生から』

 

会社再建は従業員の再生から

 今回のこの言葉は、似たような意味で何十年も前から度々聞いてはいました。例えば,「会社の再生には社員の意識変革が必要だ」とか、「会社の再建の第一歩は従業員が変わらなければならない」などです。久しぶりに、今回また「会社再建は従業員の再生からと思ってやってきた」との話を聞きました。この方は、ある老舗の旅館を再生された時期に指導された方です。今回、経常収支など経営的なことは省略し、私でも分かるような事柄を書いていきます。

 「老舗や、かつて繁盛を極めたこともあって何からなにまで旧態依然とした体質があった」、「色々と見て回り、どうしようとか考え、やはり会社再建は従業員の再生からと言うように、まず着手したのは接客やサービスの改善からだった」、「お客様の中には、たった1回しか来られない人もいるし、逆に何回となく泊まられる可能性のある方もいる。いずれにしても真心こもった接客は、将来を左右する」、

 「このようなことは当然これまでもやってきたのかもしれないが、私の見た目、違うと感じたので色々と、こまめに指摘を続けた。それらは女将にも言った」、「また、従業員にやる気を起こす意味でも従業員用の食事も大幅に改善するためにシェフに頼んだ。すると、”あー、私たちも会社から大事にされているのだ”と思われた」、

「最後に繰り返し言ったのが、この旅館を良くするも悪くするも結局は皆さんしだいだ。できれば将来も、ずっと良くなって欲しい」などと言い続けられたそうです。

  このように文章に書けば、ある種当然のようなことばかりですが、旅館の再建・再生と言う日々緊迫した状況下のやり取りは筆舌に尽くしがたい苦労や何かがあったことと私は推測しました。

 さらに、この方の話を私なりに解釈してまとめてみますと、会社の様々なリストラによっての一時期の収支黒字が達成できたとしても、長期にはそれだけでは会社の再建・再生にはつながりにくい、結局、会社の将来を左右するのは従業員の意識しだいだと言われたのではないでしょうか。

 話しは変わりますが、会社の再建や再生と規模も内容も全く異なることですが、似たような事柄を思い出しました。まず、一つ目がフィンランドの教育です。この件ついては、既に「聞いた言葉・第154回目、金太郎あめ教育の破綻」ページでも少し書いています。このフィンランドの教育が日本でも注目されたのは、「学力世界一になった、その秘密を知りたい」などからだと思われます。

 しかし、なぜフィンランドが国全体で教育に力を入れたのかは、あまり知られていません。この国は、1990年初頭頃に国を揺るがす経済危機などがあり、それらに対応するために、どうすれば良いのか、国家規模で考えられました。簡単に紹介できませんが、その中で自国で自生していくための技術や教育などに力を進めていくことも実施されました。これらのことだけの要因で経済回復したのでは当然ありませんが、その後のヨーロッパ各国の中でも注目されている通りです。

 二つ目が、我が日本でも江戸時代のいくつかの藩では、「藩の将来を担い、窮乏の時に救うのは人である」と言うことで、武士だけでなく学びたい者には農民や商人の子どもにも開放した藩校(藩の学校)を開設したりして人材育成に努めたそうです。同時に各藩では新たな食糧や産業育成も奨励され、中には全国的に飢饉が起こっても、災害用の備蓄米などの放出によって餓死者を出さなかった藩もありました。

私の関係ホームページ
 考えは変わりやすいが、体質は変わりにくい
 反対意見にも真理あり

 冒頭に書いた旅館の再建と、フィンランドの教育や江戸時代の各藩の一例は、一見違うような感じもします。しかし、共通しているのは、結局、人そのもの=人材が、国家や会社レベルの違いはあれど、「現在も将来も左右する」というベースがあるのではないでしょうか。ただ、別角度で申し上げたいのは、何も会社危機あるいは国としての様々な諸問題を解決するのは何も会社員や国民レベルだけではないと言えます。

 いくら、従業員や国民がやる気を起こしても肝心かなめの人の上に立つ経営者や政治家が、旧態依然とした考えや施策しか持ち合わせていない(あるいは、そのようなことしか発想できない)人材ならば、改善はおろか悪化するばかりでしょう。人の上に立つ方々も、事態を打開できる、その先頭に立つ人材になってもらいたいものです。


(記:2013年7月8日)

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