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聞いた言葉・第226回目、七十にして矩をこえず(しちじゅうにしてのりをこえず)

七十にして矩をこえず(しちじゅうにしてのりをこえず)

 今回の言葉、先に大辞泉やデジタル大辞泉を引用して、その解釈や用語解説を次の<>内に書いておきます。「七十にして矩をこえず(しちじゅうにしてのりをこえず)」とは、<「論語 」為政から:70歳になって、欲望のままに行動しても人の道にはずれることがない。>との意味です。

<用語解説>(大辞泉より)
 孔子(こうし)::[前552~前479]中国、春秋時代 の陬邑 (すうゆう) (山東省曲阜 (きょくふ) )に生まれる。名は丘 (きゅう) 。字 (あざな) は仲尼 (ちゅうじ) 。諡 (おくりな) は文宣王。早くから才徳をもって知られ、壮年になって魯に仕えたが、のち官を辞して諸国を遍歴し、十数年間諸侯に仁の道を説いて回った。晩年再び魯に帰ってからは弟子の教育に専心。後世、儒教の祖として尊敬され、日本の文化にも古くから大きな影響を与えた。弟子の編纂 (へんさん) になる言行録「論語 」がある。くじ。

 論語(ろんご):中国の思想書。20編。孔子没後、門人による孔子の言行記録を、儒家の一派が編集したもの。四書の一。処世の道理、国家・社会的倫理に関する教訓、政治論、門人の孔子観など多方面にわたる。日本には応神天皇の時代に百済 (くだら) を経由して伝来したといわ

 実は、今回の言葉を最初に知ったのは、私の高校生時代(今から50数年前)でした。何年生かの漢文の教科書(孔子の論語)に書いてありました。また、この解釈についても、古典の先生から習いました。しかし、当時も残念ながら現在も物覚えが悪く、勉強嫌いの性格からして、その意味の解釈違いを長年していました。

 私が間違い解釈で覚えていたのは、「矩(のり)をこえず」の意味は、「たぶん孔子が何かの偉いさんになって、さらに聖人君主みたいな人になったのだろう」と思っていました。しかし、私自身も年齢だけ、ただそれだけですが、今年8月には70歳となるので、改めて上記の国語辞典や下記の解説を見て、意味を間違えていたなあと再認識しました。お恥ずかしい限りです。

 あと、今回の言葉は、この部分だけではなく、全体を和訳や口語訳すると、次の解説とおりです。下記は、国立国会図書館「リファレンス協同ベース」の解説より。(注:分かりやすいように太文字は上野が付けた)

 『論語』の中に「子曰(のたま)わく、吾十有五(じゅうゆうご)にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知る、六十にして耳従(したが)う)、七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず。」とあります。

 『論語』の口語訳によると、「先生がいわれた。わたしは15歳で学問に志し(志学 しがく)、30になって独立した立場を持ち(而立 じりつ)、40になってあれこれと迷わず(不惑 ふわく)、50になって天命をわきまえ(知名 ちめい)、60になってひとのことばがすなおに聞かれ(耳順 じじゅん)、70になると思うままにふるまって道をはずれないようになった(従心 じゅうしん)。」となっています。

 つまり、今回の言葉は、先の辞典や上記の全文口語訳の通り、孔子が70歳になった時の心境です。(また、現在でも使われている「従心」の語源でもあるようです) さらに、私が別のことで驚いたのは、今から約2千5百年以上の言葉(原語は中国語)が、例えば「志学」「不惑」などは、そのまま現在でも何かの機会に良く見聞きする語句だなあと思ったことです。孔子の言葉の持つ生命力や新鮮さには、感心するばかりです。他にも、この論語は含蓄ある言葉ばかりなので書きたいところが沢山あります。

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 あと、ご参考までに、ここからは、私の素人解釈です。先に書いた孔子の各年齢ごとで達した心境は、ただ単に、その年齢が来たからではないと思われます。また、現在に置き換えるなら、「テストの点数が良かったから」「有名大学を出たから」「世界的に有名な一流会社に入社し、役職も上がったから」などでもないと想像します。

 つまり、中国の春秋時代を必死に生き抜いた孔子の、もっと違う境地に到達したからこそ、言えたのではと考えています。今でも数々の失敗を繰り返している私が 今回の「七十にして矩をこえず」の心境になれずとも、せめて有名な論語の一節は、少しでも勉強できるのではと思い、今回書きました。


(記:2022年1月17日)

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