策士策に溺れる(さくし さくに おぼれる)
この言葉は古今東西、色々な場面や人と関係して様々な事柄で使われています。後で言葉の解釈は書きますが、そもそも、この言葉の語源は、中国の故事からのようです。また、英語でも同種の言葉がありますので、先にご紹介します。新英和中辞典 第6版 (研究社)には、次の英語が紹介されています。Too much scheming will be the schemer's downfall.(schemer=陰謀家、策略家。全体直訳:「あまりにたくさんの陰謀(策略)は、陰謀家(策略家)の転落です」=策士策に溺れる)
再度日本語に戻って、国語辞典の大辞泉を引用して、この言葉を分解してみると各「」内に書くと次の通りです。策=「はかりごとや計画。また、事をうまく運ぶための手段・方法」、策士=「策略を立てることに巧みな人。好んで事をたくらむ人」、溺れる=「泳げないで死にそうになる。また、水中に落ちて死ぬ」 まとめますと、策士策に溺れる=「策士は、策略に頼りすぎてかえって失敗する」となります。
このようなことを書いてきますと、本来決して難しい言葉ではないのですが、なんか(直訳含めて)英語の方がストレート表現で分かりやすいような気がします。いずれにしても、あまりいいような事柄で使用される言葉ではなく、策略を巡らした人の悪だくみが結果として白日のもとにさらされて、とりかえしのつかないような状態になった時に多く使用されるようです。
これから書くことは、例えば特定の政治家、経営者、学者・専門家、公的な職員や団体役員などを指している訳ではありません。あと、地域や親戚間などで、お互いに助け合いながら生きている、名もなき一般庶民には、何か生活上で策を巡らすようなことも、ほとんど必要ないでしょうから、今回の言葉は無縁ではないかとも思ってもいます。
今回の言葉と意味は違っていますが、アメリカのリンカーン大統領の言葉紹介として私は、既に聞いた言葉シリーズ第83回目に、『全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない。』 を取り上げています。今回の言葉と聞いた言葉シリーズ第83回目の内容と、意味合いは両者少し違っているかもしれません。でも、社会的に大きな影響を与える立場の政治家や大企業などが、権力やお金を使って、その都度国民などに対して策を弄しても後で破たんすることになれば、それらは似たようなことだと思います。
私のような一介の庶民が思うに、もしも多くの国民に支持され長く継続される事柄なら、何も手間暇や巨額のお金までかけて、「やらせ」行為、宣伝・報道などをしなくても、それらは達成できたはずです。しかし、なぜ目的達成のため多額のお金までかけて政治献金と言う名の「賄賂」や、宣伝・広告費用と言う名の「世論誘導報道」までしているかと言いますと、それは国民へ最悪、塗炭の苦しみを与えることを知りつつやっているからだと思います。
つまり、その時その時、都合のいい言葉で例えば「日本国のため」、「国民やお客様のためなる」と言う表現を用いても、あるいは「安全神話」などをマスコミ一体となって振りまいても結局は、後で何か事件・事故などが発生すれば、それらの嘘や誤魔化しは白日のもとにさらされます。さらにそれらの元凶をたどって行けば必ずと言って良いほど、日本の主権者でもなければ選挙権もない「アメリカと大企業のため」に行き着くようです。そして、その後、政治の世界では与党なら野党転落(議員落選含む)、会社なら経営者引責辞任や企業倒産などの危機に直面することではないでしょうか。
あと、これまで政治などの大きな問題を取り上げて書きましたが、今回の言葉の内容は意外と思うほど例えば会社内などでもあります。これまた意味合いが少し違うのですが、例えば「あの人は”世渡り上手””だったが、あの件で全てばれてしまって結局責任取らされたねえ」みたいな会話もあります。会社が登り調子とかには、策を巡らす行為含めて問題であっても意外と思うほど目立たない場合もありますが、下り坂の時は担当者一人だけの問題に終わらず全社的に波及する場面もあるのではないでしょうか。
結局、政治などにおいては、多額の金を使いマスコミ総動員して「世論誘導報道」して、その時は何とか思う通りになっても常に危うい状態だと言うことでしょう。また、会社内においても多くの支持を得らない状態での物事進行は、いずれそっぽ向かれ破綻をきたすことを内包していると言うことでしょう。
いずれにしても策士が策を弄しても、時代の流れの速い現代においては、事が前に進むのではなく、逆に取り返しのつかない状態に追い込まれる場合が多く出てくるのかもしれません。今回の言葉は大昔の中国の言葉からですが、やはり、先人の言葉は言い得て妙と言いますか、なんか今の世相にも相通じるものがあるような、そんな気もしてきます。