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聞いた言葉・第118回目、『演説の希望と失望』

演説の希望と失望

 政治家の演説で「希望」と「失望」は、メダルの裏表の関係だろうと私は思っています。 今回の聞いた言葉は、主に2009年1月20日アメリカ合衆国第44代大統領に就任したオバマ氏との日本の政治家の演説などに触れています。 私は、内容の是非を言う前にオバマ氏の就任演説にマイナス7度の寒空のもと集まった聴衆の約200万人と言う数の多さに驚きました。また、拍手や歓声だけでなく涙までこぼして感動しているアメリカ国民の姿に、あのような雰囲気は日本では見られないなあとも思いました。

 まともに漢字が読めない、小学生からも馬鹿にされ、レベルで言う低次元にもならない政治家の評価とは別世界のようにも見えました。 ただ、大変さめた見方で、しかもどなたも言っておられる通りアメリカ史上最悪最低の大統領との評価もあるブッシュ時代の政治があまりにもひど過ぎて、現状の失望・絶望感ただよう中で、あの就任演説は今のところ「少しの光明が見えたのではなく、見たかったのに応えた」のかもしれません。

 新しい指導者が就任した以上、出来れば現状より一歩でも二歩でも改善され、さらには良くなる方向に前進するよう願っているのは 誰だって同じ気持ちだろうとは私は思います。果たして、本当に将来そうなるのでしょうか?

 言うまでもなく政治は一人の指導者で何でも変わるものではありませんし、先を見通すことまで現時点では出来ませんが 半年後、1年後、4年後どうなっているのか、全く五里霧中だろうと思います。

  あと、演説のうまさ下手さ加減はあったとしても、日本の歴代首相や政治家の言っていることと実際やって来た現状の対比が、なんとヒドイことか改めて実感させられました。まだ、つい何年か前の話ですが、国民に対して「今の痛みに耐えて明日を良くしよう」、 「痛みにたえて構造改革を」、「自民党をぶっ壊す」、「郵政改革は改革の本丸だ」、「百年安心の年金制度」などと言ったり書いたりした政治家達がいました。

 また、 マスコミは、これらの政治家の立場で強力な応援団もしくは推進役を果たしたと思います。 しかし、その結果はどうなったのでしょうか? 簡単に書けませんが、 国民・中小零細企業はじめ弱い立場に置かれている人たちには塗炭の苦しみを与えきました。つまり、「格差社会」、「不安定雇用者の増大」、「大量解雇」、 「ワーキングプア」、「ネットカフェ難民」、「ホームレス」、「医療制度の不安」、「年金不安」、「過労死」、 「年間自殺者3万人」などの言葉で象徴されているような深刻な状態に追い込んで、さらに事態が悪化してきています。

  先に述べた政治家のやり方は、結局、国民を騙して大企業とアメリカだけには奉仕してきたと言うことだろうと思います。 このような政治家の発言は、一般庶民が人に迷惑かけたり、 居酒屋か道端で雑談しているのとはレベルも訳も違うと思うのです。 舌先三寸(したさきさんずん) で口先だけ巧みで調子のいい、大きな声は一見、マスコミうけがします。それで国民の期待や「希望」を叶えるかのような雰囲気もしますし、マスコミも無批判に何十回も一気集中して報道するのでニセの改革であっても、あたかも「今後良くなるのではないか」との淡い幻想を国民に抱かせたのだと思います。

 しかも、それらのヒドイ政治の結果、事態深刻な状況なのにテレビをはじめマスコミは、いまだに国民を苦しめている元凶の政治家や学者たちなどを登場させて語らせているのですから、唖然とします。普通の人の感覚なら、これだけ間違いを犯し、国民が苦労している状況を見るなら到底公然と従前の立場で言えないはずです。

 まるで酒酔運転して重大な交通事故を起こした人が、記者会見で「もっと酒の量を多く飲んでおけば正常に運転できたはずだ」、「焼酎一升だけでなく別のウィスキーやブランデーなども同時に飲んでおけば、こんな事故にはならなかったのに・・・」みたいな発言と、どこがどう違うのでしょうか、私には分かりません。そんな政治や経済政策が、いまだにマスコミで重用される風潮があるなら、(政治状況が根本的に変わらない限り)日本の問題は処方箋が間違っているだけに一層深刻だと思われます。

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 真実を自分で探す時代

 政治の世界では、どんな真面目に頑張る方でも、その時の財政状況などから良い施策をやりたいと思っても出来ない場合もあろうかと思います。このようなことは、それなりに理解できるものでもあります。しかし、舌先三寸で調子のいい演説で希望や期待だけ抱かせて、結果国民の願いと全く逆行することばかりをするのを果たして選挙で国民は託したのでしょうか。

政治家の演説の「希望」と「失望」は、本当にメダルの裏表の関係だろうと個人的には思っています。表側にするにも裏側にするにも、結局のところは、国民の意思(投票など)や大きな世論で変わると考えられます。

(記:2009年1月29日)

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