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ログハウスの12か月
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ログハウスこぼれ話し、8月
台風と先人の知恵
 今年は、本当に台風が多かった(2004年12月8日現在までに27号)と言う印象が残りました。(注:このページ掲載写真は8月撮影のものですが文章とは関係ありません)

 ただし、気象庁のホームページを見ると、過去の台風の平年値として
・発生数 =26.7   ・接近数=10.8   ・上陸数=2.6
と掲載されていますので、発生数そのものは平均値より今年が異常に多いという状況ではないようです。

 しかし、台風の日本への上陸数は10個となりこの数は平均値より、3倍以上ですから「今年は台風が多かったなあ」と言う印象が強いのかもしれません。(また接近数も合わせれば、さらにこの数字は大きい感じになるかもしれません) 九州に上陸した台風だけでも3個あり、この数は11年ぶりだそうです。まあ、関東や関西方面より九州各地は台風には慣れていると思いますが、「今年は、それにしてもねえ」と言う感じだったと思います。

 8月に発生またはこの月内に消滅した台風は今年9個あるみたいですが、その内の18号は、9月7日長崎に上陸しました。この時の勢力は中心の気圧945hp、中心付近の最大風速40mでした。雲仙岳測候所では同測候所観測史上最高の最大瞬間風速53.2m、また、長崎市では最大瞬間風速41.9mと長崎県内の観測史上2番目の突風を記録しました。

 また、テレビ報道など見ましたら、この台風も各地で大きな被害をもたらしました。私の住んでいる長崎県大村市では、それほど大きな被害は出なかったようですが、それでも、走行中の車窓から見たところ、小屋の屋根や壁が壊れたのが何軒かありました。改めて、台風の凄まじい破壊力と言いますか、エネルギーを感じました。

 私のログハウス(丸太小屋)は、海抜約90mのまわり何もない”展望台”みたいな所ですから、雲仙ほどはなかったかもしれませんが、それでもけっこう風は強かったです。

 この台風通過後、「あんたの所は、大丈夫やった」とよく聞かれました。「ええ、何ともなかったですが、風は強かったですよ」と、そのたびに答えていました。

 実は、これには若干ログハウスの構造上の説明を要します。(記憶定かではないのですが)ログハウスは普通の民家より単位面積当りの対地重量が約6倍と聞いたことがあります。

 私の自宅の場合、(長短ありますが)約300本の丸太が使われ、15段に組まれ、さらにその丸太は約50本の通しボルトによって基礎に固定されています。このように元々、丸太の建物構造自体、けっこう頑丈な作りになっています。

 設計段階で良く話し合ったのが、屋根の形をどうするかで、これは風対策上、けっこう重要でした。私の場合、展望台みたいな所に宅地を求め、さらに平屋ながら地面から最高部の屋根まで6m近くあるので、風の強いのは覚悟して、家の見てくれ格好は全く気にせず、(掲載写真の通り)屋根は単純切妻の形にしました。(複雑な屋根形状は外観上見栄えいいのですが、逆に風を誘い込むこともあると聞きました)

 また、瓦は洋風陶器瓦でステンレス釘で固定されています。ですから、少々の風でも屋根や瓦自体が飛ばされるようなことはないのでは思っています。自然相手ですから、絶対大丈夫と言うことはありませんが。あと、怖い風といえば、亡くなった父が生前言ってことを思い出します。

 それは次の言葉です。「たいふう風は、下からもうてくる風に注意せんばね」(大村弁=長崎弁です)(「台風の風は下方からまわってくる風に注意が必要だ」)と。つまり、台風の風は常に一定方向ではなく横風、吹き降ろし、時には谷=下方から巻き上げてくる風もあり、この風が怖いのだと言うことでした。

 なるほど、横や上からの風は日常でも吹く場合もあるし、どこの家も構造上は強いと思います。でも、屋根を下から突き上げるような風はあまり普通は吹かないと思いますけど、1991年の19号台風ではまさしくこれらの突風が吹き荒れ、多大な被害と多くの屋根瓦がふき飛んだのでした。

 あと、もう一つの話しで、沖縄で、離島の民宿のご主人に20年ほども前に聞いたことです。「台風が来て、近代的なホテルにいた人たちが、怖くなり民宿や民家に避難したそうだ」と。沖縄の民家は、風対策上、家の周囲に石垣や防風林があります。私も離島で見た範囲内ですが、石垣や防風林だけでなく、けっこう平屋で雨戸などもある家も見ました。それに比べ近代的な建物は風に対し、まわり何もなくまるで”無防備状態”で、薄いガラス窓だけなら耐え切れないほどと言うことでした。

 これは、沖縄だけの話しではなく、風対策のため古来より、九州各地その他の古民家でも色々な知恵と工夫が施されている家やその周辺も私は見てきました。例えば、木製の雨戸一つでも、薄いガラスのアルミサッシよりは、よほど風対策上は優れもののような気がします。逆に、大昔とは考えられないような巨大な資金、技術や重機などを使ってダムや防災対策しても、今なお信じられないような被害の光景も見ました。

 昔の人が総て偉くて、古民家や治水・防災対策が素晴らしいなどとは申しませんが、でも先人の知恵で生かす点は多いなあと、台風が来るたびに思います。台風などに対しては、近代施工の長所と昔ながらのいいところを併せて考えればいいのかなあと、自宅を建ててからより一層そう思っています。(掲載:2004年12月10)
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