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聞いた言葉・第219回目、金で議席(票)を買う

金で議席(票)を買う

 今回の言葉は、日本から行った国会議員の調査団との会話中、ヨーロッパの国会議員(もしくは議会関係者)ら出た言葉からです。まず、毎回のように書いていますが、この「聞いた言葉シリーズ(もくじ)」は、言葉に関係する私の思い出話も含めて書いているものです。ですから、例えば何かの特定の事件、書籍、映画、報道など、一つの事柄を深く掘り下げた内容ではありません。

 そのようなことから、今回の「金で議席()を買う」との言葉も、昨今、社会をにぎわしている前代未聞・憲政史上初めてともいわれている前法相夫妻の逮捕などに絞って書いていません。そのようなことは、毎日のようにマスコミから、あるいは数えきれないほどのホームページに掲載されていますので、そちらの方をご覧願います。

 ここで長い引用になりますが、改めて今回の言葉と関係する用語を国語事典(下記は広辞苑、大辞泉)で引いてみますと、次の解説がしてあります。
・国会=「日本国憲法上、国権の最高機関で、かつ、国の唯一の立法機関。衆議院と参議院との両院で構成し、両院は主権者たる全国民を代表する選挙された議員で組織する。明治憲法下の帝国議会も俗に国会と称したが、その地位・権限は遥かに劣っていた。」

・国会議員=「国民により選挙され、国会を構成する議員。衆議院議員・参議院議員の総称」
・議席=「議場における議員の席。転じて、議員としての資格」
・票=「選挙・採決などで意思を表示したふだ。また、それを数える語」

・選挙=「多人数の中から投票などにより適任者をえらびだすこと」
・買収行為=「1, かいとること。買い占めること。2,ひそかに利益を与えて味方に引き入れること」
・公職選挙法=「衆議院議員・参議院議員ならびに地方公共団体の長および議員を公選する選挙制度を規定する法律。1950年制定」
 (以上、広辞苑より)

・政党交付金(政党助成金)=「一定の要件を満たした政党に対し、国から政治活動費を交付する制度。平成6年(1994)導入。国民一人あたり250円、総額約320億円を国会議員数や国政選挙での得票率に応じて各党に配分する。企業・団体献金以外の政治活動費を確保して健全な政治を目指す目的があり、各党は政党交付金の使途を公表する義務がある。」(大辞泉より)


 上記の解説でもお分かりの通り、普通ならば多くの国民から選ばれた「国権の最高機関」に議席を有する国会議員などは、本来ならば法律違反をするなどは飛んでもないことです。ご参考までに、現職大臣の中には、国民を表して「民度が高い」と自ら言っておられる人もいます。そのような「高い民度」の人より、さらに高いと思っておられる大臣や国会議員でしょうから、何故、今回の「金で議席()を買う」=買収事件が現職議員の中から起こるのでしょうか。もしかしたら、「民度」の物差しが、議会先進各国や発展途上国と、そもそも日本は違っているのでしょうか。

 この「金で議席()を買う」や「金にまつわる政治スキャンダル」は、戦前戦後、その後も毎年のように発生し、無くなったことはありません。この私でも学生の頃から70歳近くまで、表現や言い方は別としても、何十回となく見聞きしました。しかも、今日明日の生活費でも気にしながら生きている庶民には、縁遠い高額なお金が飛び交っている場合もあるようです。

 ほんの一例として、今から30数年前に起こったリクルート事件<情報関連企業リクルート社が、政財官界に巨額の贈賄を行なった事件。1988年に表面化し、竹下内閣崩壊につながった。(広辞苑より)>は、当時、毎日のように報道され、騒然とした状況にもなったので、私も少しは覚えています。この後、「金にまつわる政治」の再発防止策も大きな話題となりました。

 このことと直接関係あったどうか、あるいは訪欧年も記憶曖昧ながら国会議員もヨーロッパに選挙制度などの調査に出向いたとの記憶があります。これから書くことは、どこかの新聞か何かの雑誌に記載されていましたが、残念ながら、その名前までは覚えていないのですが、興味引く表現だったので記憶だけはあります。

 その時に日本の国会議員が、どこかの国の議員か議会関係者に、次のように言われたそうです。「とにかく日本の選挙制度では金がかかる。それで貴国の制度を教えて欲しい」と。すると、すかさず「それでは、日本では議席を金で買っているのか?」との返答があったそうです。つまり、日本の選挙は、買収行為がまかり通っていると思われたのでしょう。

 それは、そうでしょう。普通は欧州各国とも現在実施中の選挙制度で大小の問題はあっても、例えば区割りとか地域格差(1票の持つ格差)など、制度上の話でしょう。それが、「金がかかるから、かからない方式を」などは、最初から選挙制度とは無縁の、論外の話だったから欧州の方は、驚かれたのではないでしょうか。

 そして、しばらくして導入されたのが、小選挙区制でした。この時も得票率で3割位しか得てないのに、国会の議席占有率は7~8割という大政党に有利な制度で問題になりました。この時、旧・中選挙区制から小選挙区制へ移行する理由は、(まやかしの理由ながら)お金のかからない制度」との謳い文句(うたいもんく)でした。

 これに対し、与党だけではなく当時の大手マスコミ各社は、その応援団みたいな役割でした。しかし、結果は、火を見るよりも明らかで、小選挙区制になっても、さらに金が飛び交い一層ひどくなり、民意が政治に反映されにくくなりました。また、その後、まだまだ(無くなるはずだった)政治と金のスキャンダル」は続き、さらに導入されたのが政党助成金(1994年導入)です。この時の導入趣旨は、企業献金をなくしていくという論でした。ただし、これまた結果は、企業献金はなくなるどころか、ほぼ、そのまま維持され政党助成金と併せて「二重取り」といわれている通りです。

 この政党助成金は、年間約320億円(2020年1月17日付け日本経済新聞サイトより)ともいわれ、あと、しばらくして導入30数年経てば、(単純計算で)その総合計は約1兆円にもなるようです。この制度は元々なかった、あるいは国民には全く必要もない、それこそ「不要不急のムダ金」です。

 これだけの金額が、例えば全国各地で長年問題になっている待機児童などに、この政党助成金分(年間約320億円)だけでも、過去10年間近く対策されていれば、とっくに”待機児童ゼロ”になっていたと思われます。一見、国民生活とは関係ないような政党助成金ですが、これら含めて回りまわって苦しめられているのは、国民の方ではないでしょうか。

 また、せめて各政党は、今年度分だけでも政党助成金を受け取らず、その分を新型コロナで多くの国民のために、必死に最前線で奮闘されている医療従事者の方々へ、何らかの形で約320億円が使われたとしても、国民の誰が不平を言うのでしょうか。

 このようなことを書いていけば、結局のところ「金で議席()を買う」や「金にまつわる政治スキャンダル」をなくなるようにするには、どうしたら良いのかに行きつきます。それは、何事も基本に立ち返り、元々、議会や選挙がスタートした原点から考えることが必要と思われます。それらを箇条書き風に書きますと、当面、下記の項目と思われます。

 、「金で議席()を買う」や「金にまつわる政治スキャンダル」発生の温床みたいになっている企業(団体)献金を完全禁止して、政党は個人献金に依拠して、自らの機関紙・書籍類・宣伝物などからの販売収入で運営する。
 、3割の得票率で7割位の議席を占有する現行の(民意が反映しづらい)小選挙制度を根本的に違う制度へ変える
 政党助成金制度は廃止して、その金額は国民が望んでいる予算に切り替える。

 上記のことを実施すると「金にまつわる政治」は、大きく改善されるでしょう。しかし、このようなことを書けば、必ず「理想と現実は違う」とか言う、事実上、現在を肯定する人がいます。はたして、それで問題は、なくなるのでしょうか? 欧米諸国では、企業(団体)献金は原則禁止で、もう何十年間とやっているはずです。
私の関係ホームページ
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 常に自制心と謙虚さを持って
 若い科学者1人の価値は老いた政治家20人分だ
 雰囲気選挙より政策の判断を
 魚と組織は頭から腐る

  選挙制度についても、国民の声や要望を鏡のように写す選挙制度にすることをベースに考えれば、民意が反映しづらい現行の小選挙区制度より、必ずや良い制度ができるはずです。その知恵は、日本人ならばあるはずです。

 また、政党助成金は、1994年の導入までなかった制度=元々なかったのを、わざわざ作った制度です。それまでは、各政党で、このお金がなくても運営してきた実績があるのです。

 以上の事柄は、他国では出来ていることが多いし、日本でも過去できていたこともあるのです。ですから、どうして「理想と現実は違う」とかの言葉を使い、事実上、改善拒否や現行を肯定されるのでしょうか。国内でも過去出来ていたこと、あるいは諸外国では現在も出来ていることが、現在の日本では出来ないという論は、実におかしいと言わざるを得ません。

 今のやり方を根本的に変えない限り、また毎年、「金にまつわる政治スキャンダル」が発生するのは、目に見えています。何事も「元から絶たねば」 「悪い膿(うみ)を出さねば」、その悪しきことは直らないでしょう。

 最後に、以前からある言葉ながら「明日の天気は変えられないが明日の政治は変えられる」 「全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない」などがあります。これらは、歴史上の偉人の言葉ですが、今回の「金で議席()を買う」を元から変えていくための精神的な支柱にもなるような、今でも新鮮な指針みたいに聞こえてきます。


(記:2020年6月29日)

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