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聞いた言葉・第113回目、『人を人と思わずモノと思う』

人を人と思わずモノと思う

 今回のこの言葉は、主に利益追求第一主義の会社のやり方から来ていて過労死や食品・商品の偽装問題も含めて書いています。この言葉を最初に私が聞いたのは航空で働いていた時代に色々なことを教えて頂いた大先輩の講演だったと思います。この大先輩は、当時の航空だけでなく日本の企業などを調べて様々なテーマで話されていました。もう既に20数年前位になりますが、この言葉はその講演で聞き印象深く覚えています。

 この方の言葉については、既に私の聞いた言葉シリーズの(第10回目)『常に自制心と謙虚さを持って』 、 (第79回目)『地中海は過去の海、大西洋は現在の海、太平洋は将来の海 』にも取り上げています。

 あと、誤解なきよう申し上げておきますが、私は決して会社の利益(儲け)などを否定している訳ではありません。儲けがなければ会社は存在できませんし、 従業員もその家族もあるいは、社会全体も成り立ちません。そのようなことは私なりに分かっています。また、本来一人の人間としては、人の生命や健康は家族だけでなく知人・友人あるいは会社の同僚含めて願っておられるとも思っています。

 そのことを前提に、この言葉を続けていきたいと考えています。人の体力・能力は、どんな素晴らしい人でも、いつまでもずっと何人分とはなかなかいかないと思います。また、人として睡眠時間は最低でも7時間前後は必要でしょうし、家族や様々な社会生活の時間もないと困ります。

 どんなに素晴らしい能力のある人でも、きちんとした食生活が、その原動力であるでしょうし、日々家族だけでなく親戚、近所付き合い、あるいは色々な所に出向く用事や同僚との付き合いなど含めて直接の仕事以外にあることは十分推察できます。

 それが中には、いつ寝る時間があるのかと思われるような働き方をされ続け、さらに休日出勤などで休みもなしとかも聞きます。個々の生活まで詮索する必要は当然ありませんし、人は十人十色で仕事に向き合う姿勢も人様々だとは思っています。

 しかし、寝る時間もない、休日もないような働き方をさせている会社が、もしもあったら、それは個人の問題ではなく企業全体の問題だと思います。今でも「名ばかり管理職」問題、「使い捨て派遣労働」の問題、その他、毎週のごとく様々な形で報道されています。たまには、裁判所の判決や、ある種衝撃的なニュースなども出ているようです。

 そのようなことを聞く時、思い出すのが、その企業は「人を人と思わずモノと思う」と言うやり方で、従業員を働かせていたのではないかとの疑問です。このページ冒頭に書いた講演で述べられた時、「従業員を人と思わないから、たとえ病気や過労死になるくらいに働かせても何ら従業員の痛みを感じず、逆に(切れてしまった電球を交換するみたいに)『替わりはいくらでもいる』との考えでやっているのではないか。このような経営者は、人を人と思わずモノと思うと言うことだ」と話しておられました。

 どんなに体力がある人でも素晴らしい能力がある方でも、例え仕事好きの人でも最低毎日の睡眠も月何回かの休日もないと、それは体を守るうえでも社会生活上も、いずれ破たんしていくことは自明のことだと思います。

 このようなことを書くと、「従業員は会社に甘えるな」とか「法律や個人のことを考えていたら会社経営はうまくいかない」などと言われる方もおられるようです。しかし、広くは世界でも日本全体でも、小さくは会社でも地域の団体でも本人が望むか望まないかは別で一定の決まりやルールがあるものです。それを無視してやることは「逆の甘え」であり、無茶苦茶の論理だと思えます。

 そのようなことがまかり通れば様々なことから道徳破壊までつながり、結果として「儲けのためやったら何やってもかまわない」となります。そのようなことから、近年の例えば代表例として耐震偽装、食品偽装、偽装請負、汚染米、その他書ききれないほどの事件、騒動になっています。

 ある面、これらのことは「この商品はお客さんの口に直接入る」とか「人が住んだり、人に接する商品」と思わず、ただ単に「儲けの道具」だと思うから出来ることではないでしょうか。つまり、(公然と口に出して言うはずもありませんが、経営者の考えの根底に)「人を人と思わずモノと思う」(=儲けのためだけの道具)があったのではないかと思います。

私の関係ホームページ

 悪貨は良貨を駆逐する(グレシャムの法則)

 真実を自分で探す時代

 日本売り
 全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない
 経済=経国済民
 資本主義の暴走、資本主義の暴力
 人は言うことよりも、やることを見よ
 反対意見にも真理あり

 また、先に述べた事件などの背景にあるものは、「改革、カイカク」と称し国民のためにはならないアメリカと大企業奉仕のための今の与党政治そのもの、あるいはそれを買って出た応援団の如く助長したマスコミの責任だと思われます。

 国民を「格差社会」、「不安定雇用者の増大」、「ワーキングプア」、「ネットカフェ難民」、「医療制度の不安」、「年金不安」、「過労死」、 「年間自殺者3万人」とかの言葉で象徴されているような深刻な状態に追い込んでも、今の政治そのものの根本が変わらない限り、なお事態を悪化させていくと思われます。

 近年の様々な事件や騒動を見るにつけ一時的には「人を人と思わずモノと思う」で、たとえ大儲けたとしても、いずれ様々な破綻が起こり、最悪会社の破産や倒産などになる可能性大だとも考えています。やはり、色々な考えや、やり方があったとしても、全ての根底に人の目線で人に優しいやり方でないと、企業経営は長続きしないことを証明しているような気もします。

(記:2008年9月25日)

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