必ず真実を突き止めてみせる
今回の言葉は、映画『戦火の勇気』(Courage Under Fire、1996年のアメリカ映画、日本公開は1996年11月2日)からです。この映画紹介については、私が映画関係で調べる時に良く閲覧しています「IMDb=Internet Movie Database(インターネット・ムービー・データベース)」の『Courage Under Fir』に詳細ページがありますので、ご参照願います。<右下側の画像は、アマゾンのサイトから複写> なお、この「聞いた言葉シリーズ」は、映画紹介ページではないので映画内容それ自体は、詳細に書いていません。その点は、あらかじめ、ご了承の上、閲覧をお願いします。
この映画の監督は、エドワード・ズウィックです。キャストは、ナット・サーリング中佐役=デンゼル・ワシントン、カレン・ウォールデン大尉役でメグ・ライアン、モンフリーズ軍曹役でルー・ダイアモンド・フィリップス、ハーシュバーグ将軍役=マイケル・モリアーティ、イラリオ兵士役=マット・デイモンなどです。本題に入る前に脇道にそれますが、主役のデンゼル・ワシントンは、何の役柄でも器用にこなされる俳優さんだなあと、色々な彼の映画を見て、いつも思っています。
映画 『戦火の勇気』について、ヤフー映画の「解説・あらすじ」ページに、次の< >内が書いてあります。 < 湾岸戦争の際、戦車部隊を指揮していたが、味方の戦車を誤射し親友を死なせてしまった過去を持つサーリング大佐)。その罪悪感に苛まれ続ける彼は、酒に逃げ妻との間もしっくり行かなくなる。そんな彼に、名誉勲章候補者調査の命令が下る。候補者は、湾岸戦争で戦死したウォーデン大尉。不時着したヘリの乗員を命を懸けて救った功績によるものだ。女性初の受勲に、大統領側近たちは乗り気だが、調査を進めるサーリングは、関係者の証言の微妙な食い違いに気づく。果たして彼女の真実の姿とは……。 >
上記の「解説・あらすじ」にも書いてある通り、サーリング中佐役=デンゼル・ワシントンが、政府からのウォールデン大尉へ叙勲をするにあたって当時の戦闘状態などを調査し始めたところ、その時にいた兵士たちの証言に食い違いが出てきました。そして、それらに疑問を持ち、さらに詳細調査が必要と感じていました。しかし、直属の上司であるハーシュバーグ将軍などからは、机の上に山のようにある書類を示しながら、「早く報告書の提出を!」と命令するばかりでした。
それに対しサーリング中佐は、「不完全な報告書は出せない」と粘りました。しかし、その後しばらくして、彼は将軍から調査担当替えまで指示されます。そして、今度は一人で調査を続ける途中に、当時戦闘していた兵士たちが失踪したり、口を閉ざしたりします。その中で、モンフリーズ軍曹(ルー・ダイアモンド・フィリップス)は元気で、そのまま軍の仕事を続けていました。
その軍曹をサーリング中佐が調べようとした時に、軍曹から「あなたは、もう(調査)担当を外されたのでしょう」と言われます。その時に、中佐は「(ウォールデン)大尉が勲章をもらおうが、もらわないか、私が軍人であろうが、なかろうが、どうでも良い。私が(調査から)外されたこともだ。 必ず真実を突き止めてみせる。(I'm going to find out the truth. I guarantee you that. )」と言い返して、「真実を話せ」と軍曹に迫ります。
この後の展開は、私の予想だにしなかったことが、次々と起こりました。しかし、それは本映画のネタバレになるでしょうから、できれば映画のBDかDVDをご覧頂ければと思います。ただし、一言だけ書きますと、中佐の調べが進み、先の戦闘中の真実が明らかにされていきます。
今回の「聞いた言葉シリーズ」は、上記の太字部分の言葉からです。私個人の感想ながらアメリカ映画の中には、この種の「真実を求め、探す」みたいなシーンをけっこう見たような気がします。その一例として、アメリカ映画の「大統領の陰謀」から「聞いた言葉・第177回目、『守るべきは報道の自由、この国の未来』」を書いていますが、この映画はワシントンポスト紙の二人の記者が、それこそ必死に真実を探して、ついに任期途中のニクソン大統領を辞任に追い込んだ実話からです。
このようなことは、映画の世界だけではなく、現実の社会でも私は見ました。その一例が、イラク戦争での「「イラクには大量破壊兵器はなかった」という趣旨の議会報告書です。話は前後しますが、アメリカは、「世界の憲兵」みたいなやり方で、過去も現在も各地で戦争を仕掛けてきました。今も進行形みたいなものですから良く分かるのですが、中東の石油利権にからんだ「テロ対策」と称した戦争や紛争もあります。
しかし、その大義名分とは逆にアメリカのやり方は、むしろ「テロの拡大再生産」しているようにも見えてきます。実際、中東、アメリカ、ヨーロッパを始め世界各国でイラク戦争以前より、テロは頻発しているのは報道通りです。
ただし、私は、そのようなアメリカの非難される面も多々ありますが、別の側面から今回紹介の「真実を求め、探す」姿は、映画の世界だけでなく現実でもあるのだなあとの評価もしています。その一例が、先の議会報告書です。
それに比べ、アメリカを支持してイラク戦争を推進し供出金も1兆円以上出した日本は、議会も政府もマスコミも検証などは何年経ってもしていないはずです。念のために、この戦争拠出金は、当時の首相や与党のポケットマネーではなく、国民負担の税金からです。
次に、これは戦前の話ですが、当時、最高戦争指導の大本営(戦時の天皇直属の最高統帥機関。大辞林より)がありました。そこから発表されたのが、大本営発表(1 太平洋戦争中、大本営が国民に向けて発表した、戦況に関する情報。末期には、戦況が悪化しているのにもかかわらず、優勢であるかのような虚偽の発表をくり返した。 2 転じて、政府や有力者などが発表する、自分に都合がよいばかりで信用できない情報。大辞泉より)でした。
この大本営発表は、ミッドウェイ海戦で大敗を喫したにも関わらず発表は、まるで逆にとれるような内容でした。あと、ガダルカナル戦やインパール作戦では、将兵が何万人という死傷者・餓死者を出して撤退したにも関わらず、まるで勝ったような「転戦、転進」との表現でした。
あと、原発の安全でも毎年、多額の金額を使い(あるいはマスコミへは宣伝費として使い)、ずっと以前から問題が多く指摘されていたにも関わらず、それらを隠すように政府・電力会社・マスコミは一体となり、数々の「安全神話」を作り上げてきました。そして、2011年3月11日、東日本大震災時に発生したのが、あの福島原発の重大事故です。
先に紹介しました日本のイラク戦争の大義名分の間違いや、作られた「安全神話」などによる重大事故などの検証をうやむやにして、今後も反省はおろか検証さえもなければ、また、同じようなことが将来も起こりうることでしょう。政府が真実を隠す、間違いを直さない、金の力によって作られた「安全神話」などが何をもたらすのか、充分過ぎるくらい学んだのではないでしょうか。
話は今回の映画や言葉に戻りますが、
このような真実を追求していくことは、アメリカと日本とでは全然違う土壌と言いますか、国民性があるような気がします。日本ならば局地の戦闘証言に矛盾があっても、政府が「叙勲をする」と言えば直ぐに終わったのかもしれません。また、ニクソン大統領を任期途中で辞任に追い込んだきっかけを報道し続けたワシントンポスト紙や、その二人の記者みたいな存在は、日本では皆無に近いのではないでしょうか。むしろ、政府と一緒になって、真実を国民へ隠す報道さえするのかもしれません。
今回紹介の言葉=必ず真実を突き止めてみせる。(I'm going to find out the truth. I guarantee you that. )は、多くの国民が困る可能性のある事柄、あるいは国自体を危うくするような不正を見ても、だた黙認するだけの重要な立場の人や、そのことを知っていても何も国民に伝えようとしない報道関係者へも、向けられているともいえます。